山の田の孝女
山の田というところに、ひとりのある娘がいました。
その娘の母親は病に伏せっており、一向に回復する気配もなく夏になりました。
寝たきりの母を蚊が容赦なく襲い、病状はますます悪くなるばかり。
娘は蚊帳があれば、どんなにいいだろうと思いましたが、
貧しい生活の中で蚊帳を買うことはできません。
せめてもと思い、夜中うちわで扇いだりもしましたが
その程度のことで蚊の大群を防ぐことはできません。
これはもう神仏にすがるほかないと思いたって、
近くにある洞光院本尊釈迦如来にお祈りを始めました。
するとどうでしょう。あれほど発生していた蚊がいなくなったではありませんか。
これは厚い孝心があるため救われたという話です。
以後、付近の農民が夏季の作業中の休憩時には、争ってこの地に集まったと伝えられています。