7 天女が舞う

春霞、棚引きにけり久方の、月の桂の花や咲く、げに花かずら色めくは春のしるしかや、面白や天ならで、ここも妙なり天つ風、雲の通ひ路吹き閉ぢよ、少女の姿、暫し留まりて、この松原の春の色を三保が崎、月清見潟富士の雪、いずれや春の曙、類ひ波も松風も、のどかなる浦の有様。その上天地は、なにを隔てん玉垣の、内外の神の御末にて、月も曇らぬ日の本や。

場面の説明 ここからは、天女が地上の春景色の素晴らしさをほめ、舞いを舞う場面となります。
 天女は霞がたなびいている三保の松原の春景色の美しさをほめます。そして豊かな日本の国土を祝福します。天人の唄う東歌の声は素晴らしく、その声とともに笙・笛・琴・箜篌による天上の音楽が雲の上に充ち満ちている。落日のあざやかな紅の色は、極楽の須弥山にも例えられる富士山を照らしていると、天上界さながらの美しい光景が、この地上にあることをうたいます。そして月世界の天子としてこの世に現れている大勢至菩薩に帰依しますと言います。
この後に、「序ノ舞」という舞を舞います。