3 衣がないと帰れない

涙の露の玉かずら、かざしの花もしおしおと、天人の五衰も目の前に見えてあさましや

シオリ 写真で天女は、手を目の前に持って来ていますが、この所作をシオリといい、泣いていることを表現します。能においては、声をあげて泣くことはありません。「泣く」という感情はナマな形ではなく、すべて所作によって象徴的に表現されます。
天人の五衰 白龍が衣を返さないため、天女は天に帰ることが出来ません。悲しみの余り「五衰」の相を示し始めます。天人五衰とは、天人が亡くなる時の五つの症状で、頭の上の花まんがしおれ、着衣が汚れるなどがあります。天女は天に帰る事が出来ない事をなげき、死んでしまいそうになるのです。
この部分の訳 天女は、流れて行く雲や雁、千鳥など空にあるものを見ては羨やみ、天を懐かしみます。そして迦陵頻伽は天上に住む鳥の名前ですが、なれしたしんだこの声もかすかにしか聞こえないと言います。