2 衣を返せ

のう、その衣はこなたのにて候ふなにしに召され候ふぞ これは拾ひたる衣にて候ふ程に取りて帰り候ふよ それは天人の羽衣とて、たやすく人間に与ふべき衣にあらず、もとのごとくに置き給へ

場面説明 白龍が衣を持って帰ろうとしますと、天女が呼び止めます。
能面 喜多流の羽衣の場合「小面」です。→「羽衣」の面
天冠〔頭につけるもの〕 天冠に花がついておりますのは、天人は頭上に「花まん」と言って花が咲いていると考えられているからです。この演者は喜多流ですが、喜多流では舞込と言う小書〔特殊演出〕で行うときに天冠に花をつけます。
扮装の意味 上に摺箔をつけ、下に縫箔を腰巻きとして着用していますが、これは「モギ胴」といい、天人が上の衣を脱いで水浴びをしていたままの扮装であることを示します。