1 衣をとる

これなる松に美しき衣かかれり。とりて見れば色香妙にして常の衣にあらず。

この場面は、漁師の白龍が、春になって非常にのどかな良い天気なので、漁に出ようと仲間とともに浜にやって来るところです。

本文の内容は、付近ののどかな春景色です。
訳 はるかかなたの、姿の美しい山に雲が急に起こっているが、このあたりは「明月が高楼を照らし、雨後のさわやかなけしきである」と言う古人の詩にあるように、本当ににのどかな時である。春になるのを待っていた松原に、波が立って打ち寄せ、朝霞が立ちこめ、月も沈むことなく空に残っている。およそ風流心のない私の心にも、うっとりするような美しい眺めである。
白龍は美しい衣が松の木にかかっているのを見つけます。〔上の写真〕
訳 わたくしが三保の松原に上がって、浦の景色を眺めていると、空からは花が降り、音楽が聞こえ、なんとも言えぬよい香りが一面にただよう。これは普通のことではないと思っていると、はたしてこの松に美しい衣がかかっいる。そばへ寄って見ると、色もすばらしいし、よい香がして、ふつうの衣ではない。何とともあれ、取って帰り、古老にも見せて、家の宝にしたいと思います。