2 その語がどのような意味を持つのか調べるとき
文学作品を研究する場合、そこに用いられている言葉の「用例」が非常に重要になります。文学の場合、ただ辞書的な意味でなく、その言葉が「どのような文脈の中で用いられているか」という点を調査しないと、作者がなぜその言葉を用いたのか、その言葉はどのようなイメージを持つものとして使われているかわかりません。
たとえば、「その子は毎日おやつにメロンを食べていた。」という文章があったとします。これは現在ならば、そういうことも普通にできるかもしれません。でも、昭和50年代までの作品にそのように書いてあったとしたら、その子は間違いなく大金持ちのぼんぼんです。メロンの温室栽培も飛行機による輸入も、そのころまでは簡単にはできませんでしたから。それは、当時「メロン」という語が、新聞などにどう取り上げられているかという「用例」を調べればわかります。私は昭和36年生まれですが、大学に入る頃までは皮に網目のあるメロンは病気した時に見舞いに貰うものでないと食べられないものだと思っていました。
そういうわけで、演習で用いる辞書は、「用例」が適切で豊富であることが条件になります。この意味で、次の辞書はお勧めです。
ア、 日本語の意味を調べる時
『日本国語大辞典』全20巻 日本大辞典刊行会 小学館 昭和47年― (2階参考 813)
イ、 漢語の意味を調べる時
『大漢和辞典』 諸橋轍次監修 大修館書店 (2階参考 813.2)
『広漢和辞典』 諸橋轍次 鎌田正 米山寅太郎著 大修館書店 (2階参考 R813)
ウ、 仏教語の意味を調べる時
『佛教語大辞典 縮刷版』 中村元 東京書籍株式会社 昭和56年5月発行 (2階参考 180)
→辞書に「用例」があった時には、必ずその「原典」にあたって、確かにその用例があるかどうか確認しましょう。その用例の探し方について、次項以下で解説します。
gooなど、検索サイトで辞書を持っているところもあります。演習で使う場合には、きちんと上の辞書を引いて引用して欲しいですが、ちょっと意味を調べるのには便利です。
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