本田善郎氏 民謡収集旅行記録5 1962.2-1962.11
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民謠収集旅行記録
1962/2〜1962/11
No.5

1.§99.西春日井郡 下見
1.§100.西春日井郡 北里村藤島
4.§101.西春日井郡 北里村役場
6.§102.郡上郡 第三次収録
 6.八幡町今町
 9.大和村
 14.八幡町市島・西和良、大和村神路
 17.美並村苅安
19.§103.東加茂郡足助町綾渡
27.§104.西春日井郡師勝町能田
 27.尾張万才の起源
 27.能田万才の起源
29.§105.西春日井郡師勝町久地野
32.§106.郡上郡白鳥町収録
 32.白鳥
 35.石徹白
 35.石徹白民謠の起り
 39.石徹白案内
40.§107.東加茂郡下山村阿蔵
54.§108.名古屋市西区山田町比良
58.§109.美濃市・武儀郡 第一次
62.§110.知多郡東浦町緒川
63.§111.恵那郡付知町



§99.西春日井郡下見(1962.2.)
3回に亘ってかねて入手の資料(No.1参照)によって師勝町、北里村を下見
◎師勝町久地野 余吾謙宗氏宅  住吉おどりについて
◎北里村 藤島 加藤鍬三郎氏宅 藤島に伝わる仕事唄について
◎北里村長           田植唄 その他
以上を近日中に収録の予定

§100.愛知県西春日井郡北里村藤島収録(1962.2.16)
本田善郎 上原次郎
野 隆 小崎徳巳
協力者 同所 加藤鍬三郎氏
演唄者代表 加藤鍬三郎(73)
      加藤粂三郎(75)
      加藤広助(75)
      加藤熊次郎(72)
      加藤 太(フトル)(37)
      青山捨吉(69)

1.藤島音頭(1'42)全員
部落の盆踊りのために昭和22年頃、加藤鍬三郎が作詞、鹿児島小原節の節調で唄うようになった
6節迄収録
2.木遣唄(2'55)加藤粂三郎
〓エーン エーン エーイ コラコラ
めでた/\がヤーレン ヤットコサー ヨーイヤナー
めでた/\が三つ重なりて 鶴が御門に巣をかけた
ヨーイトナーエー ハーリワ ハリャリャ ソラヨーイト ソラ ヨーイトコエー
〓めでた/\の若松様の 枝も栄ゆりゃ 葉もしげる
〓めでたいこととは そば木に花ぢゃよ
花咲きゃ 実がなる みかどがたちます
◎棒ふり木やり




3.伊勢音頭(3'38)粂・太・熊
〓ヤーレ ヨーイヤサー めでた/\のヨイ/\ アー若松様よ
サー ヨーイセー ハーリセー 枝もネー 栄ゆて ソーレワサーエ
葉もしげる ソレソレヤートコセー ヨーイヤナー
ハリャリャ ソリャコレワノセー ソリャサーヤーレ コレワノセー
〓伊勢は津でもつ 津は伊勢でもつ 尾張名古屋は城でもつ
〓鶴が御門に何というてかけた お家御繁昌というてかけた

4.相馬節(1'36)捨
〓相馬中村のしんかい楼が コラやけて ノーエ
やける筈だよ コリャ ○てして金とる ソイショそのばちとは
スマナイネ

〓竹になりたや ツンツン釣べの竹に
可愛い主さんに吊られて 汲ませて湯にして茶にして呑ませたいとは
〓酒になりたや キンキン正宗酒に
可愛い主さんに かんして呑まして酔わしてきゝたいとがるとは
◎これは演者がかつて善光寺詣の折、講中の人々から道中歌として覚えたもの

5.鴨緑江節(3'20)太
〓朝鮮と支那と境の アノ 鴨緑江 流す筏は アリャ よけれ共 ヨイショ
雪や氷や アリャ閉ざされてよ 明日はまた チョイチョイ
新義州につきかねる チョイ/\/\ガナ チョイ/\
〓ねぇ貴方 国の土産に一枚ほしや あげたい事は山々なれど
今は蕾あたげられぬ 咲いたらまたあげます一の枝
〓鴬が梅の小枝で昼寝して 蕾枕に花ぶとん
こえじの夢みて お目々さまして 空をまた眺めてホーホケキョ

6.佐渡おけさ(2'28")太
〓ハー佐渡へ佐渡へと草木も靡くよ 佐渡はよいとこ暮しよい
〓島の娘さんの黒髪恋しや 二度と行きたい佐渡ヶ島
〓惚れちゃいけない他国の人によ 末は烏の泣き別れ
〓佐渡の金山 この世の地獄よ 歩く山場は針の山
〓佐渡へ佐渡へと草木も靡くよ 佐渡は寝たかよ灯がみえぬ



7.酒屋米かし唄(2'28")捨
〓ン エーイエ 京都の金閣寺のその上の座敷は
紫檀 黒檀たがやさん 唐南天の床柱に
楠なんぞの一枚天井 壁は瑠璃糸塗りさげられ
坪の内をば眺むれば 竜で水をば上げられて
金魚やらんちゅうの楽遊びぢゃと来る ワイ ヤレ
来るワイ ヤーレ ナーエー
〓近江八景は膳所が城 三井寺さんから見下せば
向うにちょんぼり見えるのは 百足が山ではないかいな
私も知らぬが昔の事ぢゃが 俵藤太の秀郷が
五人場当の十五筋 鎬矢にと唾をつけ
百足の急所にとゞめを刺いたとくるワイ ヤレ
くるワイ ヤーレ ナーエー
◎5.6.7は今から10年程前迄岩倉の造り酒屋で唄われていたもの
太・捨・二氏が同所で働いていた頃覚えたという
尚、おけさは柏崎から来ていた杜氏がよく唄っていたという

8.嫁獅子
この地の人々は、嫁獅子の起りについて明治時代の素人芝居禁止に対して生じた変則的演劇とみる
下題は、忠臣蔵三段目道行(10'18)粂・広にて収録
道成寺(12'00)粂・広にて収録
(朝顔日記、阿波鳴戸・巡礼歌、阿波鳴戸・お鴨殺し、阿漕平治・綱打ち→収録せず)




§101.愛知県春日井郡北里村収録(1962.3.9)
本田善郎・上原次郎
阿部 正
演唄者 同村長 水野兼三郎(66)
1.田植唄 1'13"
〓大嘗祭の机の代と払い浄めて御田植える
〓神に捧ぐる万歳稲の苗の緑の色のよさ
〓御代の栄えを唯一節に祈りうえましょ玉葱を
〓名にも負いたる万歳稲をそえてあげませその齢
〓尾張北里お田植祝い語りつぎましょ千代迄も
収録は1.3.5
大正四年大嘗祭献穀田のお田植に唄われた
当村よりは米一升稲沢から粟一升を献じたという
当時は太コが入っていたが録音では省略

2.田草取唄 50"
〓今年ゃ世がようて穂に穂が咲いた、桝はさておけ箕で計れ

3.童唄
イ.まりつき唄 44"
〓大黒様という人は 一で俵ふんまえて 二でニッコリ笑って
三で盃手ネうけて 四つ世の中よいように
五ついつものよいように 六つ無病息災に
七つ何事ないように 八つ屋敷を広めて
九つこゝに家たてて 十でとんとん納った

ロ.お月様 54"
〓お月様 ■さま お前さんはいくつ 十三 七つ
お若い事よ あの子をうんで この子をうんで
おまんに抱かしょ おまんは何処いた 油買いに茶かいに
滑ってころんで 胴ン返って★ドンガイテ★ 油一升こぼした
その油どうした 太郎どんの犬と 次郎どんの犬と
みんななめて了って その犬どうした 太コに張って




あっち向いてどんどんどん
こっち向いてどんどんどん

4.石臼ひき唄 40"
〓めでた/\の若松様よ 枝も栄えてヨー 葉もしげるー
〓ゴイ/\/\/\何ひきなさる 殿さにくわせるヨー ぼちの粉だヨー 以上収録
〓めでた/\の若殿様よ 知行ましましょ五万石

以下に歌詞のみ伝わる唄を記す。
◎田草取唄 〓新子三人田の草とりに 水もゆらゆら面白い
〓早くこの田の草取りしもうて 左うちわで見て通る
◎唐臼挽唄 〓歌は理につむ理は歌につむ、殿さおしょうぎは駒でつむ
〓雨を拾わば地雨でたのむ、高き低きも皆共に
◎機織歌 〓橋の欄かんにチョイと腰かけて、月の出を待ち文をよむ
〓機屋おり子の襦袢のえりは、梅に鴬 竹に虎
〓花が蝶々か 蝶々が花か 来てはチョロ/\迷わせる
◎米かし唄 〓こなたの潜戸はくゞりにくい潜戸で
目打ち鼻打ち痛うて島田がこわれますわい
クルワ ヤーレ /\/\ナー
◎松前木遣 〓松前殿様 ヤーアツヨー ハーヤットコセーヨーイヤナー
アー松前殿さは お国がそうどうで お江戸もそうどうで
途中でブラ/\ ヨーオイトコネー
ハーリハハリャリャノリャーヨーオイトーヨーオイトーオコネー
◎盆踊り唄 〓ヨイソレ
ヒンヤーエー 鐘がなるよー
お寺さんの鐘が ヤーレアヨイソレヨイソレ
アリャ お寺さんの鐘がなる
まんだも鐘がなる
明けりゃお寺さんの鐘がなる アーヨイソレソレ




§102 岐阜県郡上郡第三次収録(1962.3.22〜24)
本田善郎
阿部 正 金田秀男
協力者 寺田敬蔵氏(TEL521)
T.八幡町今町にて
1.茶もみ歌 36" 野々村孫市★マゴイチ★(62)
〓揉めもめ大葉も小葉も、もまにゃするがの茶にならぬ
〓もんでももんでもこの茶はもめぬ お茶師★チ★番頭様 塩おくれ
◎郡上で始めての茶もみ唄であった
◎茶もみは熱いお茶を暑い時に扱うから塩分が不足してくる

2.手まり唄 40" 河合ひで(74)
〓向う通るは生徒ぢゃないか 六つの年から学校へ入れて
雨の降る日も風のふく日にも 唯の一日遅刻をせずに
精を出したる利溌の娘 何時の試験もみなよく出来て
親の名までも世間で褒むる ほんに孝行娘ぢゃな
おめでたや お盃 一寸一貫★イカ★ついた
◎演唱者は明治36年高等小学校卒 在校中の教科書にあり、教師より教ったという

3.手まり唄 1'18" 同
〓とんとん叩くは誰さんぢゃ 新町横丁の喜兵ヱさん
今頃何しに来たのぢゃえ 雪駄が代って来たのぢゃえ
お前の雪駄は何雪駄 私の雪駄は京雪駄
京の糸屋の善四郎が 一人娘を嫁らかす
嫁入道具は何道具 長持七や★山★に帯八筋
チリメン足袋が十二足 銀のキセルが十三本
此程仕立ててやるものに 今度帰って来た時は
頭剃って衣着て 東へ向いてもナンマイダ
西へ向いてもナンマイダ 東のお寺は美しや
誰が作った美しや 八幡町の乙(末)娘、乙娘
一寸一貫ついた
◎これは教科書にあったのではない



4.子守唄 23" 牧野はつ(72)この人は八幡の旧色町の生れ、一名裏田と呼んだ。〓裏田カンツは廿五銭、機械工女は十五銭」という唄もあった
〓もうしお主さん子が可愛ゆけりゃ 守りに情をかけなさりょ
〓守りぢゃ/\とたわけにするな お家★ウチ★へ帰ればお嬢様
◎8番の子守唄と比較

5.手まり唄 36" 杉本えい(84)
〓今日どなたもお暑うござる 結構なお庭に蓮池ござる
一番舟は お旦那さまよ 二番舟は吉太郎さまよ
吉太郎さんはお馬が上手 跳ねんように落ちんように
もどりの用心合うように 合うように 一寸一貫ついた

6.手まり唄 1'12"同
〓おん城々々城木屋の お駒さん才三さん
煙草の畑はしょう八っあん 一ィ二ゥ………八ァ九コ
唐からおいでたお芋やさん お芋は一升いくらです
三十二文にまけてやる 包丁切盤出しかけて
頭を切られる八頭 しっぽを切られる唐ノ芋
鍋の中へ隠居して 隣りのおばさん一寸おいで
お芋の煮ころぼしお茶上れ そこでおならはごめんだよ
一寸一貫ついた

7.さわぎ 43" 野々村孫市
〓ハー呑めよ さわげよ 一寸先ァ闇ぢゃ コラサ
今朝も裸の下戸が来た コリャ/\
〓めでた/\の若松様よ 枝も栄ゆる葉もしゅげる

8.子守唄 52" 河合ひで
〓ねんねんころりやねんねしよ 坊やは良い子でねんねしな
坊やのお守りは何処へ行た 山こえ川こえ関町へ
関のお町へ米買いに 関のお土産何貰うた
デンデン太鼓に笙の笛 鳴るかならぬか吹いてみな

9.手まり唄 1'34" 河合ひで
〓さん坂下の坂下の 京の嫁御という人は
娘を三人もちこんで 一人娘を人にくれ




二人の娘をふたにくれ 三人目の三姫を
名古屋の町へと縁づかせ 七日の日頃も経たぬ間に
裃縫えとてあてられた(いいつけられた) 紐のつけようを忘れたで
教えておくれよしうと様 教えてやる事安けれど
人の嫁御となってから そういうことではラチあかん
そこで嫁御は腹を立て 唐紙障子を蹴破って
竹は根となる花となる 一寸一貫ついた

10.手まり唄 1'16" 牧野はつ
〓アー ゲンゲンバラバラ何事や
親もないが子もないが たった一人の男の子 鷹にとられて今日七日
七日と思えば四十九日 四十九日の墓参り お婆ン所へチョと寄って
袴と羽織をかしとくれ あるものないとてかせなんだ おっ腹立ちゃ腹立ちや
腹立ち小川へ身を投げて 上から烏がつつくやら 下から鳶がつつくやら
助けておくれよ長ヱさん、助けて上げるが何くれる 千でも万でもあげまする

11.手まり唄 1'15" 河合・牧野
〓芝の中山通るとて見れば 芸妓やお女郎★ヤマ★や太夫さん達が
行けばよう来た上れと仰有る 上れ言葉は有難けれど
腹に七月ねねさがござる この子よい子ぢゃ男の子なら
寺へ上せて手習させる 寺の橡から突き落された
誰が落いた太夫さんが落いた 太夫さ憎い奴 川へもって流せ
川へ流せば柳に止る 柳ぐるみに突流せ 突流せ 一寸一貫ついた

12.じんく 1'00" 坪井三郎
〓エーイナー トコドッコイ ドッコイ
夕ンベ横町で先の嬶に出逢うてヨー トコドッコイ ドッコイ
お前マメなか 達者なか マメであろうがあろまいが
三年前に暇もろて 今ぢゃ可愛いいこれもある
お前さんよりも男前 お前さんよりも金持で
お前さんのお世話に ノーオホホ
エーなりはせぬ エー トコドッコイ ドッコイ
〓奥州街道で南瓜がつるんで 雪隠こわして五百の損だよ アー




13.しょんがえ 50" 同
〓お前ナー 一人と定めておいて ヤーレ
浮気や其日の出来心 ションガエー
〓様とならゆく わしゃ何処迄も 枝垂柳の裏迄も

14.さば 1'03" 同
〓押さば押せ押せ 下の関迄も
押さば 港へ サゝ近くなる 七分五厘の焼さば焼さば
〓様が様なら私ぢゃとても 変る私ぢゃないわいな
〓ついておいでよ この提灯に 消して暗うはさせはせぬ

15.川崎 1'23" 同
〓郡上のナー 八幡 出てゆく時は アーソンレンセー
雨も降らぬに袖しぼる 袖しぼるノー 袖しぼる アーソンレンセー
雨も降らぬに袖しぼる
〓天のお月様つん丸こて 丸て 丸て角のうて添いよかろ

16.川崎 30" 野々村他
〓郡上の殿様 自慢なものは 金の弩標に七家老

U.大和村恩善寺にて
1.口大間見 花笠踊
これはカキ踊と同種のものである 鉦(一)、太鼓(三)
唄は下の七種あり
一.宮詣で 12'17"収録 鷲見徳松(72)青木才左ヱ門(70)池田政五郎(63)
〓サーヤー ソーリャ ソーリャ ドッコイサ ドッコイサー ドッコイセー
東西鎮まれお鎮まれ ヨー
東西鎮まれお鎮まれ
東西鎮まれお鎮まれ ヨー
東西鎮まれお鎮まれ
〓参ろ参ろと念指いて 今こそ参りたお庭まで
やら良い庭や此庭は 四方ろんろく中くごで
南が晴れてよいお庭 お庭がかりは打ちすんで



10
社殿がかりを拝すれば 社殿にまします御神は
白山天王おわします 父天王と申するは
万の災難なきようと 守らせ賜える御神で
その御礼の為にとて 花笠踊をあげまする
何かと申せばきわもなや
○引唄 1'42" 〓やら良い宮やこの庭は いかなる番匠が立てたやら
四方へ落ちる■が 廻り廻りて唯一所へ 唯一所へ

二.庭の砂 〓参ろ参ろと念指いて 今こそ参りたお宮迄
やら良い庭ぢゃこの庭は 黄金の砂★イサゴ★をまいたよな
踏めばりんりん金の音 庭のいさごが(は)金銀の
玉をつらねて敷砂の 五百重★イオエ★の錦や瑠璃の扉
しゃこの桁めのうの橋 池のみぎわは(の)鶴亀や(は)
蓬莱山も他所ならず 君の恵ぞありがたき
神と君との恵にて 国家安静繁盛し
世は泰平と治りた 何かと申せばきわもなし
○引唄 〓橋の下さる鵜の鳥みやれ 小鮒くわえて舞をまう
も一つ回れきりりと回れ 回れ/\と回された

三.神木 〓神の神木は福江の木 元から金★カネ★で中赤銅
西や東よ北南 四方に枝が栄えてぞ
まず咲きそめし一の枝 見事に花が咲き乱れ
花咲きすがれて何がなる 花咲すがれて銭がなる
銭がなるとよ月白が いか程なりたか眺むれば
千貫下りたヤラ見事
さてその空の二の枝は 同じく花が咲き乱れ
花咲きすがれて何がなる 花咲きすがれて米がなる
米がなるとよ上白が いか程なりたか眺むれば
千俵下りたヤラ見事
さてその空の三の枝 同じく花が咲き乱れ
花咲きすがれて何がなる 五穀の綿がなり下る
いか程なりたか眺むれば 千東下りたヤラ見事


11
さてその空の四の枝 同じく花が咲き乱れ
花咲きすがれて何がなる 鐘がなるとよ大判が
いか程なりたか眺むれば 千枚下りたヤラ見事
さてその空の神木に 黄金の玉が三つつぎむ
一つは開くヤラ見事 一つはつぼむヤラ見事
一つは鈴の始まりで 三つ満足に咲くなれば
一つはお伊勢へ上げまする 一つは天子へ上げまする
一つは所の氏神へ 何かと申せばきわもなし
○引唄 〓船頭殿よ/\ 船頭殿はよいけれど
仲間の乗りし船なれば 波や風も静かなれ
船路の途も近かれや

四.寺詣で 〓参ろ/\と念指いて 今こそ参りたお庭まで
ヤラよい庭やこの庭は お庭がかりを拝むれば
代々僧で善知識 両横がかりを眺むけば
お大師さんや七高僧 いらかを並べておわします
内陣がかりの有難さ 唐様がかりを眺むれば
孔雀鳳凰かりょうびんが 梅に鴬 竹に虎
さても見事な彫ものや 唐様がかりも相済んで
御拝がかりを眺むれば ひじき 桝組 組み立てて
獅子には牡丹をほりつけて 石掛★ガキ★がかりを眺むれば
石にそうばんきりくわし 毛の筋ほどもすかぬよに
御拝がかりの有難さ
○引唄 〓東山なる小松かきわけ出づる月
い笹に露の入らぬ間に
お暇申していざ帰ろう

五.百姓唄 〓これの亭主は長者かえ 長者でござらぬ作り子で
前田が千町お手作で 春三月になりぬれば
新鍬千丁召し下し 人千人も揃えてぞ
たゞ1日に打起す 何かと申せばきわもなし
○引唄 〓千畳敷 障子をたてて 黄金の網をやとまえて



12
ひと引ひけば 千石下りる
二引けば 万石下りる
三引とひけば 数知れず

六.春明草 〓あの天竺の天竺の 春明草という花は
一年に四度咲く花で 四度は四色に咲きわける
春紫で夏葵 秋紅梅に冬白で
これで四色でないかヤレ
○引唄 〓これのお屋根で今朝なく鳥
よくよくきけばめでたい鳥
黄金の玉が降れてなく
ふれふれふうれや ふれてなく

七.神木の引唄(心木の引唄) 〓拍子の殿さは いつを限りと 打ちょござる
東山なる繁り細道 い笹に露の入らぬ間に
お暇申していざ帰ろ いざさら帰ろ いざ帰ろ

2.田植唄 2'22" 日置兼五郎(60)
〓チョンボ/\と植えてはおけどーヤレ
くわぬではないこの米をー
この米をヤレ くわぬではないこの米をー
〓こゝは苗どこ ■のあと 植えて返せば■がやす
〓この田広さは太田の渡し、畦の高さはいなば山
〓うえておくれよ小株でしごく こゝは新田子が咲かぬ(以上収録)
〓うえておくれよ畦にも田にも こゝは沼田★ノマダ★で子が咲かぬ
〓こぼれ苗でもうえておく 秋にゃ五穀の米がなる
〓こゝは道ばた街道ばた まんば通いていえておくれ

3.草刈唄(よいよい) 1'51" 桝田長★チョー★助(66) 他全員
〓アーエーエゝエイ エーイ ヨーイ ヨーイ
様とならゆく おらどこ迄も
柳のヨー
すだれ柳のうら迄もー
〓 くわせごえとは面白い



13
4.わじま 1'58" 同
〓輪島ナー 出る時ゃアラ 涙でナー 出たが
ヤーハ 今は輪島のヨー 風も嫌ヨー
〓これでも唄かよ 泣くよりゃましかな
新竹小薮でやぶ蚊が泣くよな オイソレ/\
〓島も通わぬ裏山木山なれど 住めば都ぢゃのやとのま
〓一月二月三月頃には 蝶々も舞出る
鴬もまいでる マタヨーホイホイノサッサー

5.石ひき唄 3'07" 同
〓ヤー綱ひきよ たのむよエ 皆さんよ 〓ヨー
なげついたら手をしゅめて オー
ヤー 一度 やでたのむぞえー (こゝ迄平地)
〓ヤー 一寸二寸の 〓ヨイショー (以下は坂道)
サーせり引きょ たのむぞ ヨイショー
サー 小々の難所ぢゃ ヨイショー
以下略

6.伊勢音頭 4'34" 同
〓アーヨーイセー 伊勢は津でもつ アーヨイヨイ
津は伊勢でもつ アーヨーイサー ソーコセー
尾張ナーエ 名古屋は ソーレサ 城でもつ
サーサ ヨーイヤナー ヤートコセー
アリャリャノ コレワイセ サーサ ナンデモショー
〓めでた/\が三つ重りて 家にゃつるかめ五葉の松
〓娘島田にゃ蝶々が止る 止るはずぢゃよ花ぢゃもの
〓今年ゃうれしや思いが叶た 鶴が御門に巣をかけた

7.げん/\ばら/\ 38" 同
〓省略 但途中で忘失

8.川崎 1'41" 滝目ともえ
〓郡上の八幡出てゆく時は 雨もふらぬに袖しぼる
〓郡上の殿様自慢なものよ 金の弩標に七家老



14
9.やっちく 1'03" 同
鈴木主水唄い出しの部分

V.八幡町 最勝寺にて
演唱者 八幡町西和良 池戸佐市(58)
      同    井森しゅん(73)
    大和村神路  山田よしの(77)
    八幡町市島  高垣けい(72)

1.桑とり唄 1'13" 池
〓エー 桑をヨー とりゃるかー おこがいはどうよー
エー若い娘をヨー やとやるかエー
〓咲いた桜に何故駒つなぐ(駒がいさめば花がちる)

2.まがい節 23" 井
〓おさん何する勝手のすみで おひつかゝえてたくはんボリボリ
何とまがいゝんでしょ
〓芸者ころべば金にもなるが 私がころべば土がつく

3.はやり唄 24" 井
〓夏は嬉しい二人揃って白地の浴衣 橘のランカンに腰をかけ
雲が悋気ョして月ョかくす チョット蛍は身を焦す

4.田植唄 44" 池
〓植えておくれよ畦にも田にも 秋は五穀の木がなるーイ
〓田植なりゃこそあなたのそばで 間にゃ見る馬鹿思う馬鹿
〓姉がさすなら妹もさしゃれ うなし蛇目のから傘を

5.田植唄 1'10" 山
〓此所は道端ノー街道ばた ヤレまんば(縦横)とおいていえておけ チョンボ/\
〓いえておくれよ小株ネしごくヤレ 此所は沼田で子が咲きぬ チョンボ/\
〓こぼれ苗でもオラいえておくヤレ 秋は五穀の米がなる チョンボ/\
ヤレ米がなる チョンボ/\

6.さいしょね 18" 山
〓船は帆任せ 帆は風任せ 私ゃあなたの心任せとなる身じゃわいな



15
7.草刈唄 47" 山
〓ハーヨーイヨーイヨイ
わしとあなたと草刈る山ネ 茨がナーヨーイ
やぶや茨が無けにゃよい
〓やぶや茨がありゃこそ殿マ 薮の木蔭でのうやとま

8.糸ひき唄 1'01" 高
〓返事してから今宵が初よ 様が座敷は葵が座敷
恐れ多くて忍ばれませぬ 近所気兼をするわいな
近所気がねが何いるものよ さあさ入りゃれその戸をあけて
中へ入れば金りょうぶとん 周囲★グロ★を眺むりゃ金大屏風
障子あければ坪の内

9.手まり唄 1'16" 高
〓とんとん叩くは誰さんえ 新町横丁の喜ヱさん
(以下P6−3の子守唄を参照)

10.手まり唄 21" 井
〓おん神様の夏かたびらは おか京染か おん奈良染か
京でもないが奈良でもないが お袋様がお手きゝ程に
京都から紅とりよせて お筆のお先で遊ばせた 遊ばせた

11.田植唄 11" 井
〓かんつぼにぎりときいたらおよし ヤレ色より無心が先に立つ
〓此所は旦那の前田ぢゃ程に まんば揃えていえてくれ
〓どんど/\と馬追いかけて 秋はおいでよ米付けに

12.子守唄 1'30" 高
〓ねんねや こんこや ねんねこや ねんねのお守りさはどっち行ったヨ
関のお町へ米買いに 何石何升買うてきた
一升五合買うて来た その米をどうした
洗場で洗って うすい(ゆすぎ)場でうすいで
縁★エンエ★に干しておいたなら 下田の/\赤犬と
黒田の/\黒犬と さっぱりくってしもたので
その犬をどうした 太コに張りつけて


16
縁先★エンエ★に干いたら 下の宮でもデボ/\(デン/\)
上の宮でもデボ/\
ねんねや こんこや ねんねしな

13.子守唄 41" 井
〓ねんねや こんこや ねんねしな
ねんねのお守りは何処へ行た 山越し川越し里へ行た
里の土産に何もろた でん/\太鼓に笙の笛
な(ね)る子にゃ吹いてみせてやる

14.手まり唄 46" 山
〓おらが大事なお手まる様は 馬にのるとて馬からおちて
竹のそぎら(とげ)で手の平ついて 医者にかけよか目医者にかきよか
医者も目医者も御無用でござる 北の橋では小石を拾ろて
紙に包んでこよりで〆て 〆たところへイロハとかいて
イロハ消いて牡丹とかいて 村の若衆によませてみたら
聖子観音廿五の菩薩 中にござるお釈迦様お釈迦様
チョト イカツイタ

15.お手玉唄 1'21" 高
〓一おいて回れば妾ャ一立てぬ てんぼ(片手)ならこそ一立てなさりょ
二おいて回れば庭掃かぬ 女なりゃこそ庭掃きなさりょ
三おいて回れば三味ひかぬ 芸者ならこそ三味ひきなさりょ
四おいて回ればしわよらぬ お年よりならしわよりなさりょ
(四おいて回ればしゝ打たぬ りょう師なりゃこそしゝ打ちなさりょ)
五おいて回れば 碁は打たぬ 親父なりゃこそ碁を打ちなさりょ
六おいて回れば 炉は塗らぬ 左官なりゃこそ炉は塗りなさりょ
七おいて回れば 質おかぬ 貧乏なりゃこそ質おきなさりょ
八おいて回れば 鉢(めしびつ)わらぬ 桶屋なりゃこそ鉢わりなさりょ
(八おいて回れば 鉢いわぬ 桶屋なりゃこそ桶結いなさりょ)
九おいて回れば 桑くわぬ 蚕なりゃこそ桑くいなさりょ
十おいて回れば 地は盛らぬ おむら(もぐら)なりゃこそ地はもりまする
(十おいて回れば 重(箱)盛らぬ ? )



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W.美並村苅安公民館にて
1.幸原(コーハラ)筏流し唄 4'24" 一柳五三★ゴゾー★(65)他
武儀立花迄の川筋の名所を唄いこんだ唄
フシはじんく調
〓今度此の度高原村にヨー トコドッコイ ドッコイショ
遠藤候のお許しで 材木港が出きました ホイ
頃は貞享四年卯年中★ナカ★ 肥満な男が出きたので ホイ
安寺様へ参りに この子の名前は何がよい ホイ
そこで安★アン★様云う事にゃ 高原土橋をのり出して ホイ
恵比須大黒七福神 ■の倉では福の神 ホイ
釜の難所を下りおり 二股大根ひっかつぎ ホイ
鯉を釣瀬★ツルゼ★もお慰み 下田前では横渡し ホイ
大べら小べら 一滑り 剃刃切れでもひげすりよ ホイ 
根村で一竿さいたなら 健丈★ケンジョー★迄も下ります ホイ
丑★ウシ★石白石話もあるけれど 余り長いで桶竹よ ホイ
否が応でも半だきで 半だき下では加六ヶ瀬 ホイ
武儀と郡上を乗越えて 笹原前では浪高よ ホイ
同亀★ドーガメ★誂志★チョーシ★盃 宮ヶ瀬よ お須原様へ流し込み ホイ
枇杷島そうどう横にみて かやの木西分頼浪大師 ホイ
五月五日の笹巻よ ○※ 地蔵回りて大砂場 ホイ
佐ヶ坂前では運動場 大滝下りて此の瀬迄
立花会社へこぎつけて ホイ
恵比須貰うて ヨーオホホイ
エーにこにこ ヨー トコドッコイ ドッコイショ
唄っていないが○※に 〓むいてたべたら熊ヶ瀬よ」とあり

2.地搗き唄 2'07"
〓サーヨイカイナ ヨイカイナ オイ
サーよいならよいと手を〆めて オイ
エンヤの声で頼むぞえ
ヨイドッサリ/\/\/\
以上 林寛逸(60)



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〓西行が西行が 始めて都へ上る時
熱田が宮で一休み
こんな涼しい宮様を
誰が熱田と名をつけた 三田村金衛★キンエ★(61)
〓これがこの家の 亭主柱のつき納め
御家繁盛とついてくれ 一柳枝広★シコー★(68)

3.松山音頭 3'33" 一柳五三他
松山姓の藤篤志家を讃えて始めた新曲 略

4.はねそ(苅安音頭) 1'37"
〓アーヨイコリャエー
今宵一夜は浦島太郎 ハーイ
あけてくやしむ玉手箱
玉手箱 あけてくやしむ玉手箱 以上一柳枝広
〓姉がさいたら妹も さしゃれ 同じ蛇目の唐傘を 松山公衛★コーエ★(57)
〓姉は霧島妹はさつき さつき負けるな霧島に 一柳裕三(35)

5.もとすり唄 25" 松山公衛
〓アー 私しゃ 酒屋のもとはんいりよ
お手にかゝらぬ夜さはない
美濃市の小坂酒家へ出稼ぎ中に覚えた唄

6.祝儀唄 1'43" 同
(八幡のヨイトソリャ 石徹白の世栄えと同種類)
〓アー めでためでたの若松様よ アーヨイトソレ
枝も栄ゆる ヨーイ葉もしげる アーヨイトソレ
〓鶴が御門にと何というてかけた お家御繁昌というてかけた
〓わしとあなたはお倉の米よ いつか世に出てまゝとなる
〓月と一緒に出たわしなれど 月は山際わしゃこゝに



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§103.愛知県東加茂郡足助町 収録(62.4.9〜10)
本田善郎、上原次郎
阿部正
62年2月19日県文化財として指定された 夜念仏及綾渡★アヤド★踊について
足助町の中心より東南四粁の海抜五百余米の山頂に平勝★ヘイショー★寺という古刹がある。この平勝寺で行う盆行事が夜念仏(儀式踊)と綾渡踊(遊び踊)である。観音像の出来が平治元年(平安末)、平勝寺建立が鎌倉末であるが、盆行事の起りは確かではない、恐らく建立と同時であろうという。

夜念仏

A参道入り口
B山門
C観音堂
D神社
E集会所
F御堂
Gクリ

AからBへ道音頭を奏して行進し、B前にて辻回向及庭念仏を■えたあと、門開きを奏する。この時門内にて住侍が念仏を■えて閉門する
C前で観音様回向
E前で庭念仏
D前で神回向
F前で仏回向を捧げる
尚、Aよりの行列は
香炉持 燈篭A 音頭・獅子等 燈篭Bの順序




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取材協力者 平勝寺住職 小川昇堂氏
足助町教委 鈴木茂昭氏(TEL 7)
足助綾渡踊保存会行司 鈴木薫氏

1.道音頭 4'02" 音頭 松井鉱一(30)内藤勤(28)他13名
音頭〓光明遍正十方世界   側〓念仏衆生の済々報謝の光明は
  〓念ずる所を       〓照らさせ給うなり
  〓南無阿弥陀々々々々々  〓南無阿弥陀々々々(三回同様に)
  〓願以此功徳       〓明道済一切
  〓道発菩提心
合唱〓往生

2.辻回向
庭念仏 6'11" 音頭 内藤茂(29)寄田富士雄(31)他13名
音〓…… 側〓…… 合〓往生  迄は1と同じ
音〓辻々で申す念仏何のため 側〓地蔵菩薩に授け賜ふぞ
合〓南無阿弥陀

3.門開き 12'10" 音頭 伊藤鉦一★セイイチ★(29)藤沢善次郎(28)
音〓…… 側〓…… 南無阿弥陀(三回) 迄1と同じ
音〓帰命頂礼門開き    側〓南無阿弥陀仏 南無阿弥陀
 〓東方門を開くには    〓 〃
 〓持国天王頼むなり    〓 〃
 〓西方門を開くには    〓 〃
 〓広目天王頼むなり    〓 〃
 〓南方門を開くには    〓 〃
 〓増長天王頼むなり    〓 〃
 〓北方門を開くには    〓 〃
 〓多聞天王頼むなり    〓 〃
 〓発心修行門なれば    〓 〃
 〓菩提・涅槃に至る迄   〓 〃
 〓よくよく念仏申すなり  〓 〃
以下念仏三回から 合〓往生 まで



21
4.観音様回向
庭念仏 6'36" 音頭2と同じ
音〓…… 側〓…… 合〓往生まで同じ

5'20"
音〓西国三十三番の 側〓一たびお庭をふんだなら
〓すぐに浄土へ導き給うぞ
合〓南無阿弥陀

5.神回向 7'00" 音頭 鈴木薫(34)内藤茂
音〓…… 側〓…… 合〓往生迄同じ
音〓神さんの神さんの 側〓神のお庭に松を植え
〓松の小枝に笠をかけ 〓これをしるべに
合〓参らんと

6.佛回向 6'56" 音頭5と同じ
音〓…… 側〓…… 合〓往生 迄同じ
音〓二期の彼岸と盂蘭盆に 側〓駒の蹴上の水なりと
〓我と手向けてくれたなら 〓三千礼拝受けとらん
以上が夜念仏の一式である。尚この他、部落に新しい仏のある盆にはその家へ和讃を捧げる(後述)
尚夜念仏は、部落の男子青年のみで行うが、これが終ると部落総出の遊び踊が始まる。これを現在綾渡おどりと呼ぶ

綾渡おどり 音頭 鈴木薫 他踊子 14名
1.観音甚句 1'51"
〓ヨイーヨイイーヨオーオオオーイー
〓綾渡玉鉾並立つ木立 いさゝもりくる月の影
側〓ヨイーヨイイーヨオーオオオーイー(以下同じ)
〓綾渡こほしや葉月の蔭に 菩薩様みた夢にみた
〓綾渡参りは一度ぢゃ知れぬ 見なよ経ヶ嶺 金わらじ 以上収録
〓綾渡玉鉾 鐘かけ杉の 木蔭うれしや汗がひく
〓綾渡たのもし姫滝小滝 かけりゃ紐とく青嵐
〓泣いて涙をこぼさぬ様は 千両役者か時鳥
〓色が黒くていやならおよし 烏一羽ぢゃ暮しゃせぬ



22
2.嶽見★タケミ★扇子踊 1'42"
〓チョコ チョイ
〓木曽の御岳 おん田の水は 澄まず濁らず
澄まず濁らず 手数いらず 側〓チョコ チョイ(以下同様)
〓木曽の御岳 軒端に招きゃ 御坂おろしに花野原
〓焼けの山路の伯父さの墓へ 共に上げたや夫婦蓮
〓綾渡観音御手洗ぎわに あなや皇太子★スメミコ★立たします
〓涼みがてらぢゃ 勿体ないが おこし吹く風 様とねる
〓緒に取りたや御坂のたすき やがて黄金の波が立つ 以上収録
〓青田涼しや御坂を行けば お盆みたよな新月夜
〓綾渡その昔荒武者法師 陣手護りの観世音
◎御岳おどりと似た節 cf3-37(苗とり唄1'52")1-64(御岳おどり6'10")

3.八ヶ嶺踊 1'41"
〓トコサー ドッコイサ
〓高い山見りゃ赤松林 嶺々をゆるがす セショーコラ蝉時雨
側〓トコサー ドッコイサ
〓月が見た言うて背戸山明い 露にぬれたかお盆花
〓盆が来たとて奥田のヤンマ 赤い手柄をかけてゆく
〓しのぶ夕の夏山来たに 合歓はねむいと背で言うた 以上収録
〓お盆来たのでホホズキ忙し 宵にゃ紅さす高張子
〓目白来るとて雀もさわぐ ほんに矢場先ゃ 紅椿
〓お里帰りの新嫁様にゃ ヤンマチョイと来て背に止る

4.綾渡数え唄 1'28"
〓一つとセーエ 側〓一つとセーエ
〓コラ光りほのぼの初日明けりゃ 段度炭やく煙★ケム★が立つ
上★カミ★は空色煙で書く 側〓二つとセーエ(以下同様)
〓深く思えば綾渡の里に辛夷★コブシ★咲いたの花便り 白く開いて花盛り
〓水も柳もレンダももえて 背びれ動かす魚★トト★がいる 口を揃えて餌をさがす
〓夜は藁打つ吉事★ヨゴト★の祈★イノ★り 嬶がおご餅小ぎれ餅食気ばかりで色しらぬ 以上収録
〓いつのくせやら宝引縄に あけりゃ烏が阿呆鳥 口を尖らせアホアホと


23
〓昔語りを夜更けてあけて トンド栃坂寝もやらぬ くどくいうてもわしゃ知らぬ
〓南無と唱えて観音様へ合わすうい子の掌★て★が赤い 小ちゃいこの子の手が赤い
〓山に生れて山笹原に なけや鴬 主と来た 姿見しょとは言はせぬ
〓こゝは綾の津 古廟の標野★シメノ★雪の本坂お縫坂 尻尾出したと誰がいう
〓とらえ様のないお主の影が おらを辛気にこじらせる えゝしんきになじらせる

5.延命踊 1'19"
〓トコセーエ ドッコイセ
〓寧比曽 可愛いや 寝顔がかわい 奇田の若様尚かわい
側〓トコセーエ ドッコイセ(以下同じ)
〓御坂登ればそよ吹く風に 深田蛙が勢いたつ
〓登りゃ大門来たれや奥堂 昔偲ばす親王塚
〓段戸山奥イガ栗小栗 はいて行かしゃれ金草鞋 以上収録
〓コンと啼いたよ古廟の狐 秘めた尼御の恋衣
〓想い深田の葉莨やめて ドモのお神へ月詣り
〓青田深田に夕風渡りゃ 露を乱してとぶ蛍

6.綾渡よさこい踊 1'10"
〓コラ チョイトコイ ヨサコイ
〓声はすれ共姿は知れぬ 主は雲間の時鳥 側〓チョイトコイ ヨサコイ
〓土に幾年空蝉ゃ悲し 鳴いて終日木にすがる
〓様の心を写してみたや 山の端月は ても丸い
〓綾渡なりゃこそ織りなす錦 大慈大悲の灯に映える
〓一度ばかりぢゃお顔がしれぬ あいにゃ昼間も来ておくれ 以上収録
〓まゝにならぬでお鉢を投げた そこら辺りがママだらけ
〓神に願かけ叶わぬ時は 廿三夜のお立待ち
◎長野・西筑摩新開村に「よさこい」がある。〓今のよさこい何処からはやる、江戸の吉原五丁目からヨサコイ ヨサコイ
cf.日本民謠大観P119.NO.159

7.綾渡花づくし 1'57"
〓ソラ ヨーオオゝイーヨーオイヨイ
〓紅の色香に椿がもえて 嶽の根雪の綿帽子 側〓ソラヨーオハイーヨーオイヨイ
〓春がふけたと卯の花白い 御坂登れば紅つゝじ
〓晴れの高原石亀くどきや 幼な撫子チト赤い
〓佛恋しと溝萩あかい 何の石亀不動滝 以上収録



24
〓とげがあるとてそりゃ何ぢゃとて 薊かわいい高の沢
〓御坂萱原尾花が招きゃ 蜻蛉あわててスイととぶ
〓見てがないので花さへ暗い 桐手ほしやの小紫

8.平勝親王車挽唄 1'43"(笠づくし)
〓音頭は風そ千年の鶴の一声張上げて
側〓ソレソレヨイヤナー 一つ (以下同様)
〓人目を忍ぶには 女の心の吉野笠
〓古妻いとわねど 風にもまれて天こ笠
〓見もせで君なれど深く思えば三度笠 以上収録
〓夜な夜な門に立ち 人がとがめりゃかくれ笠
〓今迄ぢゃ通ったけれど、今は心の変り笠
〓紫小紫 顔にチラチラ紅葉笠
〓情がこもりきて 雨のふり笠日照り笠
〓山域美濃尾張 川を隔てて近江笠
〓この子が可愛いさに 買うてやりたや嫁入笠
〓から傘重ね笠 これが浮世の笠づくし

9.足助綾渡踊り 1'12"
〓トコドッコイ ドッコイショ
〓せー 綾渡参りゃれ皇太子★スメミコ★様の 願い尊とや ノオサ観世音
側〓トコドッコイ ドッコイショ
〓良いと思えばどちらからみても 髪は結てよし結わでよし
〓まゝになるなら竹樋★ドヨ★かけて 水で便りが知らせたい 以上収録
〓お前そんなに酒ばか呑んで わしにゃ菰でも着せる気か
〓寺の御門に蜂が巣をかけて お坊さ出りゃさす入りゃさす
〓綾渡観音杉★ホコスギ★木立 鳴くや日ぐらし 葉もれ月

附記 夜念仏の鉦の打ち方




25
・和讃 西の河原(新仏が幼時のとき)
音頭〓西の河原の地蔵尊     側〓十より下の幼な子は
  〓一つや二つや三つや四つ   〓親さえ知らぬ死出の山
  〓誰を知辺にくれくれと    〓閻魔の前へ参りして
  〓七七四十九日目に      〓下りも習わぬ膝下りて
  〓紅葉のようなる手を合わせ  〓とうの蓮華をさしあげて
  〓はちすの頭を地につけて   〓閻魔そのよし聞こしめし
  〓とがなき様子を申上げ    〓親を先立てとはずこが
  〓とががないとは何事と    〓親に菩提をとはれては
  〓これ罪咎ではあるまいか   〓作りし罪もあるまいに
  〓さてさり乍らさり乍ら    〓地獄へとてもやらるまい
  〓なりたる善根あるまいに   〓婆婆と冥土の境めて
  〓浄土へとてもやらるまい   〓西の河原へ離されて
  〓しばらくこゝに遊べよと   〓小石を寄せては塔をくみ
  〓ひるやむ時のくげんには   〓真砂を寄せては塚をつき
  〓色よき花を折り集め     〓一丈組んでは父のため
  〓塔や塚をと飾りたて     〓二丈組んでは母のため
  〓早や三丈の御時は      〓我身の為とて組み納め
  〓無縁の法界兄のため     〓日もある内に遊べよと
  〓日も西山に傾けば      〓組みたる塔も突きくだき
  〓鐘の響に驚きて       〓ついたる塚もかきちらし
  〓色よき花を野にならし    〓地蔵菩薩にすがりつき
  〓こゝやかしこへふき散らし  〓西へ向いては手を合わせ
  〓父様恋しや我身とて     〓母様恋しや我れが身は
  〓東へ向いては手を合わせ   〓婆婆と冥土の事なれば
  〓誰そ答える者もなし     〓汝が父か母かよと
  〓峯で木魂の声すれば     〓谷より峯へかき上り
  〓峯を見れども父でなし    〓これぞこたまか もの親か
  〓峯を見れども母でなし    〓そのまゝそこに倒伏し
  〓地蔵菩薩の御覧にて     〓冥土の父母おれぞとや


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  〓汝が父母また婆婆に     〓めい錫杖で撫で寄せて
  〓召したる衣のその中に    〓夜のほのぼのとあけむれば
  〓一夜の宿もおかしある    〓元の河原へはなされて
  〓遊ぶ様こそ哀れなり     〓二つまいたを親として
  〓一つまいたを兄として    〓逃げつかくれつ遊べども
  〓死出の山より鬼共が     〓河原表へ舞下る
  〓三尺二分の剣を持ち     〓花のようなるみどり子を
  〓一打打つかと存ずれば    〓二打打つかと存ずれば
  〓火災となりて燃え上る    〓ほうらとなりて燃え下る
  〓憂いも辛いもみどり子が   〓よくよく念仏申すなり
  〓しょうじの哀れを止めして  〓西へ成仏なされける



27
§104.愛知県西春日井郡師勝町熊田(62.5.9)
かねて長瀬要七氏に依頼してあった能田万才を収録
◎万才の起源
1.延喜年間 平安■都 衣食住を祝う ex.御殿ほめ
2.室町時代 太夫 扇、才造 鼓 掛素袍・頭巾・侍烏帽子
3.中世(鎌倉) 禁中 正月五日御釘始★チョーナ★ののち清涼殿にて万才を舞う。将軍家にても殿中で上覧の万才を舞う
◎尾張万才の起源
亀山天皇の御代、山田郡木ヶ崎(現東区矢田町)長母寺★チョーボージ★の開山無住国師が同寺の寺領味鋺村の人々に頌歌を作り与へた
(味鋺村石田新左ヱ門(兀★ハゲ★太夫)他15名の陰陽師)
石田新左ヱ門(鎌倉の頃、梶原の家人であったが主家滅亡ののち無住国師と共に尾張へ来り、爾来家系連綿陰陽師を業とし、万才をこととした)
明治維新後は、自由に人々が習うようになり、各地に多くの万才師が生じ、且つ各地に伝播した。中に、桂五郎という名人があった。
桂五郎 海部郡方領村に住み多くの人々に万才を教えた。当時の風俗画が今も甚目寺観音に保存されている。この画中、当時の万才師として、長瀬幸右ヱ門、石田繁三郎、長瀬清吉、長瀬亀三郎等の名が記されている。
◎能田万才の起源
明治初期 長瀬幸右ヱ門他3名が桂五郎に習い、やがて明治中期には幸右ヱ門等に50名余の弟子がつくようになった。そして大正の全盛期に至る昭和初期に減少し出し、終戦後は殆ど行われなくなり、今では当時の弟子の長瀬要七、長瀬藤市両名のみが生存している。昭和36.4.10数十名の有志により、能田万才保存会が出来た
以上長瀬一美氏記より
◎能田万才の内容
種類 5(六條万才など)
歌詞★フシ★ 4(神カブシなど)
はやし 6(お茶ばやしなど)
三曲万才 8(伊賀の水月など)

◎今回は上記のうちお茶ばやし(17'11")を収録
指導 長瀬要七(70)長瀬藤市(66)
太夫 長瀬一美(36)
才造 長瀬 勇(53)
   〃 利一(41)
   〃 昭夫(36)
   〃 金保(33)
   石田 悟(27)
   〃 久雄(27)



29
§105.愛知県西春日井郡師勝町久地野(62.6.1)
§99の下見に基き、住吉おどりを収録
本田、上原、柳瀬、成田
◎住吉おどり 秀吉が朝鮮征伐から帰り、住吉神社の神前に戦勝報告を行ったとき余興として京から呼び寄せた白拍子に舞わせた。これが住吉おどりの起源という
◎当地に住吉おどりが伝わった経緯は明らかではない。但し、60年程前迄は当地方の二三ヶ所で行われてきた。今では久地野のみ
◎住吉おどりは氏神の祭礼の余興として行って来た。揃いの衣裳をきた土地の十才前後の子供が踊り、大人が唄いはやす

・踊り→伊勢音頭(収録2節3'22")、あねさんおどり(収録2節3'46")、東海道五十三次(収録2節4'52")、豊年おどり(収録2節1'28")、かっぽれ(収録3'08")

・踊り狂言→新念佛(収録全曲17'02")、旧★ヒネ★念佛(収録全曲13'23")、安珍清姫日高川渡舟の場(収録全曲27'41")、安珍清姫日高川道成寺の場(収録全曲15'10")
来演者 余吾謙宗★ケンシュー★(TEL西春460)
    古川鎌三郎(80)
    加藤元三郎(70)
    加藤静節★シズカギ★(75)
    余吾一郎(61)(三味線)

1.伊勢音頭
〓ヤットコ/\ヤットコサーノセー
アリャ伊勢のヨーエ 豊受けの銭掛け松はナ
コリャヨイトセ 今は枯木でヤンレ 朽ちかけるナ
サゝ ヤートコセー ヨーイヤナー アリャリャリャリャ コレワノサ
コリャ ヨイコノ ナンデモセー コリャコリャ


30
〓松に成たや峠の松に 諸国大名を下に見る
〓奈良の春日社の御神社の獅子は、獅子の白い毛が筆となる
〓相模 山照手の姫は 小栗いわれに身を投げる
〓ソーダヨ ソーダヨ 天下太平の五穀成就の神治め(このおさめは2、3にも同様)

2.あねさん踊り
〓ア コリャ/\
あねさん ほんかいな ドッコイ 後朝の
言葉も返さで明日の夜は コリャセ
裏の窓から わし一人 〓合図はよしか
首尾をようして 出るわいな
ソリャ ナン ソリャヨイ 何としようかいな
〓お客さん何処行き おなじみの さてもきれいな身の廻り
仇な伝馬町をかごで越す 〓心の急ぎ
お羨ましゅぢゃ ないかいな
〓花魁さん 実ほんかいな 馬鹿よしゃ さても疑い深いぞへ
間夫は の外やら 〓心の内は
二世も三世も末の世も
〓奴さん道中かへ 旦那を迎えに さても寒いのに唯一人
雪の降る日もいとやせぬ 〓お供さんは辛いね
いつも帰りは行列で

3.東海道五十三次
〓ヨー ハーイヤオイ
日本橋のハーイヤオイ 夜明けに渡る ヤオイ
初の旅 コリワイセ 手を引き合うて品川へ アリャ ドッコイセ
沖の鴎がちらほらと
〓別れても末が思いのしるしとて まゝの川崎しゅっぽりと
願い神奈川 わしゃ嬉し
〓口説かれて それ程ヶ谷に思われて
今更原宿を戸塚さへ 藤沢寺に参りたや
〓たすきかけ平塚まわる流行唄



31
それにお前さんはしゃらくらと大磯か おかしゃんせ

4.豊年おどり
〓ドッコイ
今年ゃ世が良うて 今年ゃ世がようて穂に穂が咲いた
オカカノコレワイセ
穂べらに穂が咲いた この妙かいな ドッコイ
〓浜で立て者ナ 源之助朱雀(アタリモ)好くのが音羽屋 この妙かいな
〓二度とせまいぞや ふられた褌(ウリムイタ)拍子にひょいと出た この妙かいな
〓余りしたさにれんげでしたら(オヘソノ)ぼふのが面白や この妙かいな

5.かっぽれ
〓沖の暗いのに白帆がサー 見ゆる コリャ
何れか紀伊の国 ヤレコリャコリワイセ 蜜柑舟とね セイ
蜜柑舟なネー 蜜柑舟 サーマアヨイ エイコリャセイ
何れか紀伊の国 アレキタコレワイサーエ 蜜柑舟
〓淀の川瀬のその水車、誰を待つやらくるくると

6.新念仏
梗概 東海道小田原宿のさる寺へ機屋の娘 お市が墓参りに来り、寺の長老と恋を語っているところへ、寺男久助が来て、これを見て邪魔をするという物語

7.旧★ヒネ★念仏
梗概 法界妨が旅の途中、抜け参りに行く、おくみに道を尋ねられたのが縁となり、恋をしかけられ難渋の所、おくみの供の奴の甚三が追いついて危急を救うという物語

8.踊狂言安珍清姫日高川渡舟の場

9.踊狂言安珍清姫道成寺の場
註.89共に通例の筋、但し9は長唄、娘道成寺の舞台演出にやゝ似通ってまり唄などそのまゝの歌詞で入っている。また、油揚を鐘のイボに突きさして鳶に引き上げさせようなどという趣向ののち、深川節を唄って吉原



32
§106.岐阜県郡上郡白鳥町収録(62.7.16〜18)
本田 阿部正、金田一男
協力者 寺田敬蔵氏
T.白鳥町農協有線放送スタディオにて
1.とやま 1'44" 正者英太郎(70)他
〓アーヨーイヨーオイ
わしが出いても合やせまいけれど ハ ヨーイサー ヨイサー
ところはヨー 合わぬところは ごめんなさりょ
ハー ごめんなさりょ あわぬところは ごめんなさりょ
〓千里響けよ入相の鐘 きかせともない明の鐘
〓桜三月あやめは五月 菊は九月の土用に咲く 以上収録
〓昔なじみと去年の暦、あれど今年の間に合わぬ
〓お前松の木妾こうかの木 待つに来うかでうれしかろ

2.よいとそれ 1'56" 野崎信夫(31)他
〓ハー郡上はよいとこ 越前よりも ハ ヨイトソレ
竹の小林 ヨーホイ そよそよと
ア コイツァ そよそよと 竹の小林 ヨーホイ そよそよと
〓西の山から東の山へあなた尋ねて北の山
〓恋し優しや雪駄の音は 主はどなたか知らねども
〓筆は優しや海山越えて 便りきいたりきかせたり 以上収録
〓お前百迄 妾九十九迄 共に白髪の生える迄

3.どじょう 1'17" 三輪東平
〓アヤレヤレ 沼田でどじょうすいて来たに
お嬶茄子のほぞとりゃれ ヤレ ほぞとりゃれ
お嬶茄子のほぞとりゃれ
〓ヤレヤレ どじょうこねまいか 明日の朝飯や どじょ飯ぢゃ
〓ヤレヤレ 妾の若い時ゃ五尺の袖で 道の小草も靡かせた
〓ヤレヤレ 向い合わせに持ちたる妻は 合わせ鏡に見る如く(通い妻を唄ったもの荘川?)
〓ヤレヤレ 妾の心と向いの山は他の木はない松ばかり
註.収録は1.2.5番
〓ヤレヤレ お瀬戸ねず鳴き かけては(錠を)戻る 妾に出よとの事かいな(白川)



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参考資料
○天保十一年記録の「郷中盛衰記」によれば、「延享時代迄は宮拝殿は九頭と祖師野計りよし盆中氏子拝殿にて夜明し踊り候由……以下略」
とあります。これが郡上の踊りを証明する唯一の古文書です。ちなみにこの地(和良村)は七十五結祭りといい一般にシジュウニツルミという祭りが明治末期ごろまでありました。
○文久年間(一八六一〜六三)の郡上藩公布に「盆中踊場所えは家中の者、並びに妻子・召仕まで行ってはならない」という記録があります。当時踊られていたという証明になります。

4.鐘鋳り唄 1'40" 野崎千代松(52)
〓今日はお寺のヨーホーエ 鐘鋳りぢゃ ソーナエー
郡上一番のーエ 鐘を鋳るエー
〓郡上の白鳥来通寺様の鐘を鋳るぞえ村山(地名)で
〓鐘がなるかよ撞木がなるか鐘と撞木が合うでなる
〓有難いぞえ来通寺様の今日はめでたや鐘を鋳る
〓十と三年九月の八日郡上一番の鐘を鋳る(大正13年)
註(大正13年9月8日来通寺の鐘を鋳るとき三重県桑名の中川冨蔵という鋳物師を招いた)

5.ヤッサカ 2'44" 正者他
〓アーリャ 茲に過ぎにし その物語 アーヤッサカ ヤッサイ
茲に過ぎにし その物語 アーヤッサカ ヤッサイ
アーリャ 所何処よと尋ねてきけば アーヤッサカ ヤッサイ
所何処よと 尋ねてきけば アーヤッサカ ヤッサイ 以下略
註(鈴木主水のクドキ)

6.老坂 2'36" 正者他
〓アリャサー 国は京都に其名も高い ドッコイショイ
京都に其名も高い ア ドッコイ/\/\サ ドッコイサのドッコイショ
〓糸屋与右ヱ門豊かな暮し 〓店は賑やか暮しも繁昌
〓一人娘にゃお吉というて 〓年は16今咲く花よ
〓器量のよいこと卵に目鼻 〓店の番頭に清三とありて
〓年は22で男の盛り 〓器量よければお吉が見染め
〓通い通いが度重なれば 〓親の耳へもそろそろ入る
〓これをきいてはおかれはせまい 〓暇をとって行きゃせ今日限り
〓自体清三が大阪生れ 〓ものも言わずに只逢いたいと 以下略

7.世栄え 2'56" 正者他
〓こゝにすぎにし 其の物語 アラヨッサカサッサイ
すぎにしョその物語 アラヨッサカサッサイ
〓中国にその名も高い 以下略
註(白井権八東下の途中 桑名の渡しの物語)



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8.手まり唄 田中ちせ(47)
イ)27"
〓テンテン 手まりを渡しましょ
家の隣のそのまた隣の 赤いノレンのかけたる とこの
およし様(その場に居合わせた人の名)のお手の下まで
シッシッ しっかりお渡し申した
受けとった 受けとった さあさ どなたに渡しましょ

ロ)1'11"
〓げんげんばらばらお比く尼が 親もないが子もないが
たった一人の男の子 鷹にとられて今日で七日
七日と思えば四十九日 四十九日の墓参り
おばさんとこえ ちょいとよりて 袴と羽織貸しとくれ
あるものないとて貸せなんだ おっぱら立ちや腹立ちや
腹立ちまぎれに水汲みに 下から鳶がぎゅう/\と
上から烏がカアカアと 助けておくれよお殿様
助けてやることァ安けれど 人の嫁御になってから
そんなことではだしかんで 奥へ入りて髪切りて
唐紙障子を蹴破りて あとはどうなる 山となる川となる

ハ)1'00"
〓ついてく ついてく何処迄ついてく 江戸迄ついてく
江戸の城と名古屋の城と くらべてみたら
名古屋の城は名高い城で 一段上って二段上り
二段上って三段上り 三段上って南をみれば
ようてよい子が三人通る 一でよいのは糸屋の娘
二でよいのは二の屋の娘 三でよいのは酒屋の娘
酒屋の娘は器量がようて 一貫五百の雪駄をはいて
白チリメンの襷をかけて 海のグロ(一隅)へ汐汲みに汐汲みに
註.演唱者が同町為実★タメザニ★で幼少期に覚えたもの



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U.同町糸徹白★イトシロ★たに屋旅館にて
1.唐臼ひき唄 1'49" 上村★ウエムラ★静男(60)鴛谷★おしたに★みわ(55)他
〓この臼は 上の山の松の木の 〓元つだ(地上六尺のところ)の臼
元つだなれど想う殿とひくならば 手車にのしょ(軽くひこう)
手車にのしょが想う殿がない程に 臼が重たい
〓お十七と寺の前の八重桜 〓今が盛りぢゃ
盛りぢゃで樋★トヨ★の水の落つる程 ものを想うだ 以上収録
〓鵜めが岩のわご(椀・凹み)の溜り水で 〓姿見をする
姿見をすりゃやせて見よや身やつれて 色の黒さよ
色は黒けれど諸国(くにの)諸大名に 想われて立つ
〓夜が明けたおきて行きゃれ忍び妻 〓眠りさいた(眠い)か
眠りさしゃせねど 別れづつなさに 帯を替えてして行く
帯を替えてして行こが 殿の帯は浅葱染 わがのはな色
洗いざらし 為★シ★いし次第に 恋が薄くなるとよ

2.木■唄 1'39" 上村静男・鴛谷みわ他
〓ハー 木■きゃ山家の ドッコイショ
山中にゃ住めど 〓山中にゃ住めど
みづし(御厨子・女中娘の意)位にゃ目はかけぬ
〓挽けよしゃくれよ 谷あい木挽き 挽かにゃ とれんぞ両金が
〓大工可愛いや木挽きは憎や 仲のよい木をひきはなす 以上収録
〓木挽きゃ優しや格子の蔭で 細い目をして女郎見る

3.草刈唄 1'54" 上村とり(52)上村静男
〓アーヨーイヨーヨーイ
今年始めてヨー 草刈奉公 〓草刈奉公
寄ってくりょ 荷持ち寄ってくりょ かげの駒
かげの駒 荷持ち寄ってくりょ かげの駒
〓馬に乗るのが大名ならば 夏の草刈りゃ皆大名
〓駒は三才 馬方廿才★ハタチ★ 真鋳轡の音のよさよ

4.田植唄 1'57" 鴛谷みわ 上村ふき(62)
〓植えて下さりょ畦にも 田にも 〓畦にも田にも



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ヤレ秋は五穀の米がなる
〓米がなるヤレ秋は五穀の米が成る
〓五月水程恋いしのばれて 今は秋田の落し水
〓植えて下さりょ小株ネこしで こゝは山田で子が咲かぬ

5.粉ひき唄 1'55" 須甲★スコー★甚一(45)上村とり(一名猫の子)
〓アーヨーホーイ ヨオヨオイ
いり粉ひくには かいくるくると かいくるくると
かけた襷の廻る程 廻る程襷のかけた
かけた襷の廻る程
〓表来たのに何故戸があかぬ 憎くや板戸のかけ金が
〓憎や板戸の掛金よりも かけた婆さが面憎くや 以上収録
〓いり粉ひくよな辛苦なことを 誰がしそめたさせそめた
〓唄いたけれどお上手がそばで 唄に鉋をかけたがる
〓月の明りを夜明けと思うて 様をかえして気にかゝる
〓寺へ参るよりいり粉をひきやれ 二升と三升ひきや五升となる ※ツヅク

6.世栄え唄 1'42" 上村弘★ヒロム★(41)須甲甚一、鴛谷みわ
〓ハー俺が出いても どうせ合やせねど ハヨイトソリャ
合わぬ所はヨーイ御免なさりょ ヨイショ御免なさりょ
合わぬ所はヨーイ御免なさりょ
〓揃た揃たよ踊子が揃た 稲の出穂よりまだ揃た
〓心正直白山参り 拝みたいわよ御来光が 以上収録
〓稲の出穂には出むらがあるが こゝの踊りにゃむらはない
〓盆の十六日闇ならよいに お手を控えて踊ろうに
〓知らぬ人とて一夜や二夜は 露の縁とてあるものを
〓参らまいかよ京から伊勢へ 親のある間に若い間に
〓梅に鴬とる時よいが 花を散らすが憎うござる
※(〓遠い所に親様もてば、烏鳴いても気にかゝる
〓姉さあれみろ向いの山で、猿が餅つく木の又で
〓俺はお前の婿ぢゃで頼む。婿にゃ婿ぢゃがうすむこぢゃ)



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〓破れ障子に梅の木かいて 春は鴬来てとまれ
〓年はよりてもまだ気は若い はやり小唄の節をならう

7.夜搗き唄 2'21" 鴛谷みわ、上村静男、上村とり
〓アーラついて下さる イヨホ この若衆に
この若衆に
何で御恩を イヨホ 送ろやら
送ろやら 御恩を 何で
何で御恩を送ろやら
〓何で御を送ることぁ いらぬ 今宵一夜さ 抱いてねよ
〓これをつき上げりゃ抱いて寝る程に お待遠でも待ちなさりょ 以上収録
〓つけどはたけどこなれぬ稗や とっと奥山のぢゞ稗か
〓お邪魔なれどかつかせておくれ ながの露道来たわいの
〓在所でもぢゃに他所他村から お手伝いとは有難や
〓来るか/\と切子の窓を あけて待ちます夜もすがら
〓兄の様より弟の様は 生れ性もよい器量もよい
〓惚れてくれるな俺や弟ぢゃに つれてゆくにも家がない
〓夏は木の蔭 寒中にゃこたつ 離れともない主のそば

8.ヤッサカ 1'50" 上村弘、須甲甚一
〓ハーリャ 一つ人の目にゃ楽★ラク★そに見えて アラヤッサカサイサイ
二つ再びこんな事しようまい アラヤッサカサイサイ
〓ハーリャ 三つ見る間に釜の火は消える アラヤッサカサイサイ
四つよき殿まと一生切っちゃならぬ アラヤッサカサイサイ
〓ハーリャ 五つ何時もかも油断が出来ぬ アラヤッサカサイサイ
六つ無理焼きゃ炭細こうなる アラヤッサカサイサイ
〓ハーリャ 七つ泣き泣き釜の火をよせる アラヤッサカサイサイ
八つ焼いた炭ゃ値段が安い アラヤッサカサイサイ
〓ハーリャ 九つこの山ぢゃ機代が高い アラヤッサカサイサイ
十でとっくりと勘定したら アラヤッサカサイサイ
(嬶の褌も買えなんだ)この段(これで)止めおきまして
次の先生にお任せしよう



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註.炭焼き口説きという
ヤッサカは石徹白の盆踊りの開始に踊るもの

9.かんこ踊り 3'34" 上村弘 上村静男




10.手まり唄 上村とり、鴛谷みわ、上村ふき
イ.1'14" とり、みわ
〓あったらまつや 唐松や 親があるか子もあるか
親もないが子もないが たった一人の男の子
鷹女にとられて今日七日 七日と思えば四十九日
四十九日の寺参り 寺へ参りの帰りには
おばさの所へチョと寄りて 裃袴をかしてくれ
あるものないとて貸せなんだ オツ腹立ちや腹立ちや
それ程腹が立つならば 辰己の川へ身を流せ
身は身は沈んでく 小袖は小袖で浮いてくる
小袖のたもとに子が一人 男の子ならふみつぶせ
女の子なら拾い上げ あるもの食わせて養って
十四になったら縁につきよ 縁につきよ
丁度一かん渡いた



39
ロ.34" とり、ふき
〓おらがおば様、焼餅好きで よんべ九つ夜明けに七つ
一つ残してたもとに入れて 馬にのるとてテンコロリと落いて
拾ろや恥かし拾わにゃ惜しし
惜しし/\の焼餅を 焼餅を 丁度一貫渡いた

ハ.39" とり、ふき
〓おらがおば様、九十九で熊野の黒部さへ嫁に
嫁に行けまい奥歯が抜けて、奥歯が抜けても前歯がござる
前歯二枚にお歯黒つけて、白髪三筋にびんつけつけて
赤い丈長ばらりとさいて
本町街道しゃらしゃらと しゃらしゃらと
丁度一貫渡いた

その他 石徹白 藤★トー★左ヱ門(40)
鴛谷虎蔵(61)演唱



40
§107.愛知県東加茂郡下山村阿蔵★アゾー★収蔵(62.8.8)
本田 阿部正、河合金太郎
協力者 同村教委 金山氏
阿蔵盆供養
由来 起源は安和二年頃と伝わる。使用している鉦は文久二年(1862)の銘あり、悪疫平癒のための踊りで、以来毎年旧暦七月十四〜十六日、念仏により神仏を慰安したものという
十四日 新仏の供養
十五日 弘法様とお寺(先祖代々)の供養
十六日 観音様と氏神様の供養
明治丗四年から大正初期にかけては一時衰えたが念仏のみは続いた。大正二・三年 川合重作、橋只四郎が北設系の笛太鼓・手踊りを加えて盛大になった。昭和になってからは笛太鼓は更に改善し、新仏と先祖の供養を旧十四日の夜、お寺で行うようになった。

概況 参加者は十五〜丗五の部落の男子(若連中)養子は十六日夜になると里帰りするが、十四から十六日の間この男子達は他部落へ出る事を許されない
旧七月一日より一日置きに、太鼓と和讃の練習
◎年行事(四人)村の代表として若連中の相談相手となる
◎若連中→頭(四人)、他
◎服装 菅笠、浴衣、下駄
後記の如き行列で庭入、跳込、念仏
こゝで御馳走の出たあと、手踊りを部落全員で興ずる

◎念佛の種類
道念佛、庭念佛、手向、和讃
三声上げ、二口づめ、南無阿弥陀
光明遍照十方、願以此功徳

◎光明遍照
〓光明遍照 十方世界 念仏衆生摂取不捨の光明は
念ずる所は照らさせ賜うなり

◎願以此功徳
〓願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生

◎手間(八種)
イ.神社 〓千早振る/\ 神の御前に松を植え
松の小枝に笠をかけ 笠を知辺に参らんせ
ロ.お寺、弘法 〓西国三十三番のお庭を一度び踏んだなら
直に浄土へ導ける
ハ.親 〓二期の彼岸とうら盆にゃ 駒の蹴上げの水なりと
汲んでなだえてくれたなら 三辺来拝受取らん
ニ.親 〓■天竺の天竺の 天の川原の亡者舟
舟は白金、帆は水晶 申す念仏帆に上げて
鐘打つ撞木で漕いでゆく
ホ.幼児 〓朝顔の朝顔の露よりもろき身を持ちて
何故に後生を願わんせ
ヘ.子供 〓帰命頂来箱根山 登りてみれば塚二つ
一つの塚には弥陀如来、一つの塚には時鳥
ほととぎす/\ 誠の冥土の鳥ならず
我子の行方を語りけり
ト.親 〓六字の名号がたいなれば、六根六字もきよくなり
我身のばちりん雲晴れて 常夜の闇をも照らすなり
チ.子供 〓宵に生れし緑子が 夜中風にとさそわれて
朝の露と消えてゆく

◎和讃(ナゲ七種、二口づめ五種)
イ.ナゲ型
1)釈迦和讃(お寺)
〓帰命頂来釈迦如来 宏大慈悲のある仏なり
十九の年とや修行して 丗六とや申すには



42
浮世の仏法広められ 四十八とや申すには
お弟子をとったが五百人、八十一とや申すには
二月十五の卯の時に 釈迦は寝涅に入り給う
ありし御弟子が集りて 白き姿に様をかえ
嘆かし給うは御弟子達 天にこがれ地に伏して
釈迦はこくいと昇られる よくよく念仏申す■し

2)念佛由来(弘法、区長)
〓帰命頂来念仏の 由来をくわしくたづぬれば
昔りゅうぐん浄土より 蛇しんのいりたる人間を
皆取りほさんとねんくし いざなぎ様の仰せには
七村七人集まりて 百万遍を申せよと
七村七人集まりて 百万遍申したら
百万遍の功徳にて 如何なる蛇しんも打ちしづみ
其時人間浮ぶべし よくよく念仏申すべし

3)宮和讃(御宮)
〓帰命頂来御宮の 杉や桧の其中に
瑠璃の宮殿奇妙なり 竹田が番匠が手をこめて
つるやまいちょうの彫物に 綾や錦のみすをかけ
大願成就なし給う

4)親和讃(親)
〓帰命頂来我親は 死して冥土へ行く時は
せまき道をも広くして ひばらぎ もやをも切りすてて
千段薪を切りつんで のびが山にと火葬して
一日二日は煙立ち はや三日となりぬれば
妻子子供が集まりて 竹やうつぎの箸をとり
しこつを拾い塚をつき 塚の印に松を植え
松は栄ゆる親でなし 親のお寺へ参らんせ
詣りてみれば屋根見事 一の御門は瓦ぶき
宮さん御門は苔ぶき まして客殿ひはだぶき
御前輝く光明は 阿弥陀の光有難く



43
よくよく念仏申すべし

5)七つ子(幼子)
〓帰命頂来七つ子は 朝の役とて何をする
れん水ちょう水お茶の水、昼の役とて何をする
七十五人の膳立てを 晩の役とて何をする
九十五匹の馬を飼い 余りのことの悲しさに
姉殿の髪と我髪と 柄杓に曲げて柄をすげて
極楽世界の大川を かえほすばかりかものぐさや

6)七つ子和讃(幼子)
〓帰命頂来七つ子は 父に別れて来三年
母に別れて今日六日 明日の七日をといかねて
一畳だたみに倒れ伏し 半畳だたみは皆涙
何を嘆くや七つ子は 嘆くさまこそ哀れさに
親のゆずりは何にぞや 金襴どんす綾綿
しろみの鏡が七面 化粧道具も数知れず
お歯黒揚子の前つくし 岩に生えたる姫小松
岩を頼りと育ちゆく 水の生えたる浮草は
水を頼りと育ちゆく 我は此世の一人者
親兄弟とて更になし 親なら一目見たやとて
いざさら親の墓参り 右の御手は番を持ち
左の御手は珠数や花 鎌をば腰にとさし乍ら
御墓所へ参りして 外輪の中に香を炊き
長き草をば鎌で刈り 短き草をば手でむしり
草を敷寝に塚枕 一時まどろうその間に
二人の親様夢にみた 恋の衣に恋の袈裟
咲いたる蓮華を手にもちて 蓮華の軸をば杖につき
香の煙で目がさめた、よくよく念仏申すべし

7)八橋(お手、年忌)
〓帰命頂来八橋の ほんちょうくわしく訪ぬれば
三河の国にてありし人 六子と八子をつれてゆく



44
弟の六子の申すには 我等兄弟あり乍ら
親の菩提をとわんとて 親の菩提をとうなれば
いざさら箱根へ参らんせ 箱根ならいばあれじゃとて
箱根のらいばこいにみて 箱根へ参りしこんげんの
わい口ちょうど打鳴し 我親助けたいたまえ
其由権現きこしめし 六万貫なる札が出る
兄の八子が申すには 此札くばるにたいげとて
右や左にまきちらし 弟の六子の申すには
此の札配るは安きこと ありさめざめと泣出し
むらさめざめと共に泣き まいたる札をば手にとりて
街道下りへ七ヶ国 阪東奥へ八ヶ国
六万貫なる銭を寄せ 桧田の巧にたくませて
たけ田が番匠を呼出して 車を組みし銭をつみ
四条ヶ町へと押出し 三河の國へと引つけて
一万貫では堂をたて 一万貫では寺をたて
一万貫では塔をくみ 一万貫では塚をつき
一万貫では橋をかけ 一万貫では供養し
供養半に空みれば 五色の雲がたなびいて
二人親様 弥陀薬師、兄の八子が観世音
弟の六子が勢至なり じょうだん昔に至る迄
橋は八橋かけねども 名は八橋と申す也

ロ.二口★フタクチ★づめ型
1)血盆★ケツボン★経(産にての死)
〓仏説たいざん血盆経 如人罪とが深きとて
血盆経の印あり 東はとほじょうこくいとて
薬師如来の浄土なり 西は西方極楽の
阿弥陀如来の浄土なり 南は南部の世界とて
観音勢至の浄土なり 北は北方ほくろくの
釈迦牟尼如来の浄土なり 四方浄土のことなれば
月にてけがれし血水★ガッスイ★を 捨てべきとことて更になし



45
大地へ即ちこぼすれば 地神公神汚すなり
山へと即ち捨てければ 山の神をも汚すなり
おりに交わり火にくばり 屋公神をも汚すなり
麻の布へとしめしたり 大日如来を汚すなり
川へとすゝぎ流すれば 川水神をも汚すなり
その川下では水を汲み 仏へとても手向ければ
猶々仏を汚すなり それでも仏の不びんさに
仏を念ずる時はまた 誠の心とて夜に三度
血のまるがせとは後にみて 其の血が溜りて池となり
広さが八万余丈なり 深さが八万余丈なり
婆婆にてありしない姫が その血の池へと身をすてる
かみは浮草 身は沈む そろ/\底へと沈むれば
血も怖しき虫共が 寄合い集り刺すばかり
余りの事の悲しさに 磯へ/\とつきみれば
あをうらっじゃという鬼が 沖へ/\とつき出す
余りの事の悲しさに 婆婆にてありし本経の
壱百丗三巻の 血盆経を読み修め
如人念仏なされける よく/\念仏申すべし

2)塞の河原(幼子)
〓小児の哀れを止めして 十よりうちの幼子が
親さへしらぬ死出の山 何を知辺にくれ/\と
閻魔様へと参りして 折りも習わぬ膝折りて
ひちすの頭★コーベ★を地につけて とうの蓮華をさし上げて
とがなきようだい申すれば 科がないとは何事ぞ
親は先立て子はあとに 我の菩提をとう我が
親に菩提をとわれして 扨さり乍ら/\
作りし罪科ない我を 地獄とても落されず
咲いたる蓮華のない我を 浄土とても導けず
婆婆と冥土の境にて 暫らくこゝに遊べよと
さいの河原に離されて ひるや六刻のくげんには



46
小石を寄せては塔を組み 真砂を寄せては塚をつき
色よき花をば求めして 塔よ塚よと飾り立て
一丈組んでは父のため 二丈くんでは母の為
三丈前の御時に むえんほうかい兄のため
我身のためと組みおさめ 日のある内は遊べども
日も西山に傾けば 鐘の響におどろきて
くんだる塔をもつきくまし ついたる塚をもかきらし
色よき花をも何にせよ 右や左に撒きちらし
西向いては手を合わせ 父様恋しや我が身を
東へ向いては手を合わせ 母様恋しや我が身を
峰より■の声すれば あれが父かよ母かよと
谷を峰へとかけ上り 峰をみたけれど父居らず
谷をみたれど母おらず 扨は■か ものおしや
そのまゝ其処に倒れ伏し 地蔵菩薩が御覧して
緑子共は何嘆く 嘆く様こそあわれさよ
汝が父母また婆婆に 冥土の父母俺ぢゃとて
りん錫杖で撫寄せて 麻の衣の袖下に
一夜の宿をかしおくれ 夜もほのぼのとあけぬれば
元の川原に離されて 一つまいたを兄として
二つまいたを親として 逃つかくれつ遊べども
死出の山より鬼共が 三尺二寸の剣をもち
一とうち打つかと存ずれば 花のようなる緑子が
火焔となりて燃上る 二打ち打つかと存ずれば
元のようなる幼子が こむらとなりて燃え下る
さいの河原の緑子が 憂いも辛いも道理こそ

3)麻の本朝(若い未婚男子)
〓麻のえんげと申すには 婆婆と冥土の境にて
石の御門に候えば 高さを見れば十六丈
石の御門の其中に 十間四面の御堂あり
その内御堂の御本尊は 大日如来と申すなり



47
罪科改め通される 善をなしたる精霊と
悪をなしたる精霊と 二派に別れて通される
善をなしたる精霊は 黄金のお礼にこじをそえ
極楽さして通される 悪をなしたる精霊は
黒金お礼に五字をそえ 地極さして通される
閻魔それを見給いて 汝が着たる一枚を
脱いで通れよ精霊よ 夫でも逃れぬ事なれば
未来のえんぎをきかす也 扨天竺の天竺の
くろこく文殊という人が 麻種三粒をふり下し
まず一の麻種は 釈迦の衣とふり下し
中一つの麻種は 神や佛の御前に
折掛けみすとてふり下し 残りし一つの麻種は
人間生れし誕生の 御肌かくせとふり下し
麻は数多に作れども 麻の初とてあげもせず
月機日機を織り乍ら 折掛けみすとてあげもせず
心の鬼にせめられて 三途の大川通られん

4)釘和讃(老未婚男子)
〓えんこう山の麓にて 釘の念仏縁起あり
死して七日七夜目に 閻魔の■へとつき給え
薬師の前を見給えば 四十九本の釘がある
其の釘長き様は又 二八六寸むよの釘
其の釘うたるるとこどこは 頭に五つ 腕に六つ
胸と腹とに十四本 腰と膝とに廿四本
其の釘うたるる時は又 天はぶぜいの雲の上
下は奈落の底迄も 乱るるばかりかこたまえて
此釘抜ける様もある 此釘抜ける様は又
本そ一巻のべおけば 頭と腕との釘抜ける
法華経一巻供養すれば 胸と腹との釘抜ける
念仏一巻申すれば 腰と膝との釘抜ける
其の釘よしては供養し 供養半に空みれば



48
道念仏 略

五色の雲がたなびいて 釈迦はぶぜいの舟にのる
観音勢至が帆の役で 廿五の菩薩が櫓の役で
瑠璃の帆柱押立てて 黄金のせめをふくませて
法華経やまてを帆に上げて 弥陀のみすまをくりかけて
ぎゃてい/\の波打てば 弥陀の浄土へ舟がつく
よく/\念仏申すべし

5)小萩姫(姫)
〓帰命頂来小萩姫 親の菩提が廻りきて
何して問わざる様もなく 我身の髪を切りて又
三文ばかりは売りかいし 油としすみ皿を買い
それで燈明立てければ 夫を長者が見給いて
姫さえ燈明立てけるに 我等が燈明立てんとは
黄金の皿をば買揃え 夫で燈明立てければ
長者が立てたる燈明は 糸より細き風ふけば
万燈明をふき消し 山萩が立てたる燈明は
雨風雷電する中に 消える様とて更になし
あの燈明をけさんとて 言うより早くけたまえば
燈明皿さえ三つに割れ まず一つの燈明は
信濃国の善光寺 如来堂へと修まりて
中一つの燈明は 天竺したんのそのあいの
閻ぶ堂へと修まりて 残りし一つの燈明は
日本我長紀の国の 高野山なる奥の院
御万燈へと修りて 山萩成仏なされける

◎庭入順
1.香焚 1名 位牌をつけた香炉を捧げた男子
2.切子提灯 1名
3.笛 7名 後向きに行進
4.太鼓 6名 径、長共に40p位の曲もの胴、〆太鼓、左手に下げる
5.鉦 1名 双盤
6.踊子(男) 6名 一文字笠、扇、鉦鼓、下駄



49
7.踊子(女) 15名 数え唄を踊る少女、六つの紙花で飾った
鳥追笠、扇、下駄
8.鉦 1名 双盤
9.切子提灯 1名 2と同じ

註)2.9(Aの面には、南無阿弥陀仏(二面)と、光明遍照十方(一面)十方世界念仏(一面)と記入、B面の内二面に、石灯篭の型を切り抜いたカゲ絵あり

◎念仏順序
光明遍照−手向−和讃−願以此功徳−道念仏(南天)−庭入念佛−三声上げ−二口づめ−南無阿弥陀

◎笛太鼓の種類
道行、観音道行、新車、二拍子、十六拍子、さぎり、二上り、岡崎、門前ちょう、門やぶり、すゞかぐら、早岡崎、大拍子

◎手踊りの種類
数え唄(踊り込みと兼用)、とよえ、やんさ、こらさ、どっこいさ、すくいさ、千代ちゃん

収録概況
1.道行 笛、太鼓による素囃子 4'36" 1
踊り込み 笛、太鼓、双盤の伴奏で数え唄を唄い入場、扇の踊り 6'38"(十一番迄)
2.観音道行 笛、太鼓 1'25" 2
3.新車 笛、太鼓 ヨイトキタ、ヨイヤソレ、マンダマダ 1'13"
4.岡崎 笛、太鼓 笛が岡崎女郎衆の譜を吹く、アリャ、コリャ 1'24"
5.二拍子 笛、太鼓 オーリャ、オーリャ、サッサイ 55"
6.十六拍子 笛、太鼓 オーラ、オーラ、オー、ヨー 1'08"
7.さぎり 笛、太鼓 ヨイショ、ソーラ、オリャ、ソーリャ 1'06"
8.二上り 笛、太鼓 ヨイトセー、マンダセー 1'28"
9.大拍子 笛、太鼓 オリャー、オー、ソーリャ、オリャー 1'05"
以上テープ@



50
10.
光明遍照 0"から
手向(お寺、弘法様) 1'04"から
和讃(念佛由来) 1'48"から
願以此功徳 8'02"から8'36"迄

手向(親) 0"から
和讃(麻の本朝)後半省略 1'00"から8'43"迄

光明遍照 0"から 4
三声上げ ナムアミダブツナムアミダ12回 1'02"から
二口づめ ナンマイダナンマイダ6回 4'20"から
願以此功徳 5'42"から6'08"迄

11.出(引唄)
〓東西鎮まれお鎮まれ アソーリャ(リピートあり)(ソレー笛太鼓)
鎮めたお庭で一踊り
帰命頂来御宮の 杉や桧のその中で、瑠璃の宮殿奇妙なり
月も西へと傾けば 飽もまいるし夜もふける、之にてお暇★イトマ★仕る
(笛太鼓早間で終る) 3'58"

12.手踊
〓阿蔵よいとこ 一度はおいで 年に一度のヤンサ盆踊り(やんさ) 0"から 5
一度はおいで 年に一度のヤンサ盆踊り
アンコ飲もうと段戸へ登りや 谷間清しのアメの魚
今夜来るなら裏からおいで 表車戸で音がする
赤く色んだ西瓜でさえも 中にゃ苦労の種がある
蛍可愛いや草葉のかげで 忍ぶ男の道を照らす
姉は霧島妹しさつき さつき負けるな霧島に 4'37"迄
さあさ皆さん踊りあきゃせぬか 他の踊りとかえましょか 5'29"迄
〓豊栄節ならエーヤーホイ 習わにゃならぬ(とよえ)
国の土産にせにゃならぬ トヨエー
習わにゃならぬ 国の土産にせにゃならぬ トヨエー
昔なじみと爪突く石は 憎い乍らもあとをみる
山の中でも三軒家でも 住めば都の風がふく



51
鹿よ泣くなら小声でなけよ 妾ゃはかない恋がある
月の出頃と約束したが、月は山半にわしゃこゝに
桜三月あやめは四月 五月野に咲く百合の花 10'50"迄
さあさ皆様踊りあきゃせぬか 他の踊りとかえましょか 11'43"迄
〓土用半ばに秋風ふけば 虫の鳴く音も涼しかろ
秋風ふけば虫のなく音も涼しかろ(すくいさ)
竹に短冊七夕様は 思い思いの歌をかく
姉もさしたに妹もおさし 同じ蛇の目のから傘を
裏の小畑のトーモロコシは、若い乍らも毛を生やす
様よ三度笠そらしてかぶれ、少しゃお顔が見とうござる 15'36"迄
さあさ皆様踊りあきゃせぬか 他の踊りとかえましょか
他の踊りも数々あれど どんな踊りとかえましょか 16'48"迄
〓一つとエーエノサアーエー
一つほんじょうの桑の町 米屋の娘がおルヨとて(数え唄)
サゝジョウカイナ
二人兄弟ある仲を押分け忍ぶよ吉ささん
見ても見事なかんざしを おルヨにさして振りをみる
夜昼通いはいたさねど 子供にみられて恥かしい
何時来てみても戸があかぬ あけておくれよ吉三さん
むつぎの花さえ八重に咲く おルヨと吉三さん何故咲かぬ
何をいうにも語るにも おルヨがげんどで語らねど
屋敷広めて部屋たてて おルヨと吉三はねずの部屋
こゝはよいとこあかりはな そろ/\おいでよ吉三さん
遠い所に行くよりも 近い桑名に来ておくれ
一夜造りの白酒を おルヨに呑まして気を浮かし
十二ひとえの維片を おルヨに着さして振りをみる
十三おルヨは産をして 後先たのは吉三さん
白き木綿を五尺ばか これが産着となるものか
十五で男を五人もち もの中よいのが吉三さん
六枚屏風の戸をあけて 手をやり足やり心やり



52
七夜経たぬに髪をとき それでもよいのに吉三さん
八万地獄に落ちる時 おルヨと吉三さんは落ちゃせぬ
十九は大厄女の厄 信心なされよ吉三さん
機も織り得ず手もきかず それでもよいのか吉三さん
一つ一つに申せばよいけど これでお暇ま 申します
以上の八番迄収録で 22'07"

〓内緒々々で内緒ごとしたら チリシャン (千代ちゃん)0"
内緒々々のネー チョチャン 子が出来た ハヤシ〓そんな事ァ内緒々々
アンコ飲もうと段戸へ登りゃ 谷間清しのアメの魚
蛍可愛いや草葉のカゲで 忍ぶ男の道を照らす
松になりたや峠の松に 上り下りの客まつに
箱根八里は馬でもこすに 越すに越されぬ大井川
主サ正宗わしゃ錆刀 主は切れてもわしゃ切れぬ 3'03"迄
さあさ皆様しおれちゃ駄目よ 二度としおれりゃさとられぬ
嫁にとるなら阿蔵の娘 色は白くて器量よし
唄は唄いたし 唄数は知らぬ 唄えばわしゃしらぬ
様よ三度笠さらしてかぶれ 少しゃお顔も見とござる
来ても見やんせ阿蔵の里へ いつも平和の風がふく
踊り踊らば品よく踊れ 品のよいのを嫁にとる
箱根八里は馬でもこすが 越すに越されぬ大井川 5'20"迄
〓色気づいたに気をつけなされ 裏の小畑のホオズキは(こらさ)
こらさドッコイサで儲けた金をサ 只の一つでチャッチャモチャに
儲けた金をサ 只の一つでチャッチャモチャに
赤い絵日傘伊達にはさゝぬ 日よけ虫よけ男よけ
箱根八里は馬でも越すが 越すに越されぬ大井川
信州しなのの新そばよりも 少しゃ切れてもそばがよい 7'48"迄



53
◎念佛和讃の鉦の打ち方


◎未収録の手踊唄
〓阿蔵よいとこ一度はおいで 山にゃ黄金の花が咲く
〓里にゃ緑の早苗の田面 谷の流れにゃアメおどる
〓朝の露ふむ谷また谷に 床しさ早百合綾にさく
〓滝沢時雨れて阿蔵がはれりゃ 杉や桧がいや育つ
〓霧がふるふる阿蔵の里は 霧の中から日が登る
〓髪は黒髪心の若さ 阿蔵娘の程のよさ
〓わしが国さで自慢のものは 阿蔵若衆の心意気
〓登る阿蔵山三千尺よ 夏は滝沢でアンコすき
〓咲いてくやしや千本桜 鳥も通わぬ山奥で
〓泣いて涙をこぼさぬ奴は 千両役者か時鳥
〓桜宗五郎子別れよりも 朝の別れがわしゃつらい
〓可愛いがられて島田の頃に やがて丸まげ人の嫁
〓今夜踊る子は皆めんどりか 声がないので歌やせる

◎場所見とり



54
§108.名古屋市西区山田町比良(62.10.8)
同所 六所神社で毎年十月十五日に行われる祭礼の節、豊年に限りカラクリ人形山車が出る、その山車の囃子を収録。
比良は、南北両部落に別れ、山車も各一台を所有。夫々が神社へ巡幸し、鳥居前で合致し、年番順で入内し、囃子及びカラクリを奉納、そののち引分れて各部落へ帰る

北→珠割りの大黒、魚釣りの恵比須、前人形(唐子)
南→湯立の巫女、鼓の仕丁、笛の仕丁



55
北比良山車、囃子(二福神山車)
1.神明(シンメイ) 11'33"
山車鼓行★ココー★道中お練りの曲
笛 堀場甚四郎他 四名
大太鼓 堀場柳助
付胴★ツケドー★ 柴山鶴吉 他一名

2.囃子 3'17"
御祝儀に対する御礼の曲(神前奉納の囃子の略式のもの)
笛 堀場甚四郎 他三名
大太鼓 堀場柳助
付胴 柴山鶴吉 他一名

3.長道(ナガミチ) 12'00"
道中の小休止慰労の曲
笛 同上
大太鼓 加藤銀作
付胴 大野正勝 他一名
鼓 堀場儀十 他二名
この間 前人形は囃子に合不合で準備運動的動作をくり返す

4.囃子 3'18"
2と同じ 但し、カラクリ付き
両手さげ静止

エビス左手をかざして空模様をみる
互に相談し合う
糸を垂れる仕草 1'14"魚カゝル、1'45"釣上



56
魚釣上げ喜びつゝ戻る
珠玉を小槌で割り玉から宝船出て帆が動く
踊り狂う

5.そゝれ 5'53"
神前打込みの曲
笛 堀場甚四郎 他二名
大太鼓 加藤銀作
付胴 柴山鶴吉 他一名
鼓 堀場藤晃 他二名

6.囃子 3'30"
神に奉納の曲
笛 堀場甚四郎 他三名
大太鼓 同上
付胴 堀場柳助 他一名
鼓 同上

7.前葉(まえば) 2'00"
帰路へ転進の曲
笛 同上 他二名
大太鼓 同上
付胴 同上
鼓 同上



57
南比良山車囃子(お湯とり車囃子)
1.神明 6'57"
笛 4
大太鼓 1
〆太鼓 2

2.下り端★サガリイ★(付つけ)囃子(略式) 2'27"
カラクリ 巫女両手を交々上下して前進、笛、鼓囃す
1'37" 湯立始める テレポ早く変る
2'11" 湯立終り 巫女しゃがみこみ後へ戻る→2'27"
(註以上1、2は道行に演ずる)

3.神明 12'25"
4.下り端 1'25" 湯立舞初め40"で湯立て終り バック
5.神降ろし 2'40"
6.囃子(本調二回) 50" 神々に喜んで頂く曲 以上3〜6神前で奉納
7.進車 4'08" 帰路転進の曲

◎収録はないが同神社祭礼の神楽の種類は
北比良 1.六本づくし、剣の舞 2.舞神楽、七夜の舞 3.天来★テング★る舞、宮神楽 4.神明神楽
南比良 1.対馬神楽 2.天来る舞 3.神明神楽 4.地神楽



58
§109.岐阜県美濃市及武儀郡第一次収録(37.10.26〜27)
本田、阿部正、松岡昌也、水野通久
協力者 美濃市教育委員会主事 大前丈英氏
武芸村 〃     田内光三氏
一.武儀郡武芸村東武芸清瀬神社にて
a.十六拍子 3'34"
太鼓と鉦で囃す、極めて素朴な拍子。昔から天王祭(旧6/14)秋葉祭(旧6/17)、天神祭(旧6/25)、おんか送り(武芸村のウンカを中洞へ送る)等に、部落毎に囃されてきたもの
太鼓(羯鼓)杉本安市(67)、平下惣治郎(79)、藤井小一(74)、松下錠吉(67)、田内宗一(67)

鉦(双盤)
杉本岩輔(75)、田内勘一(71)、田内栄一(66)、藤井多吉(65)、田中清三(57)
尚この他、お鍬様の神事の時にも行われて来たが、現皇太子誕生の年を最後にお鍬様は行われていない。

b.おばば 1'53" 藤本宮一村長(70)他
〓おばゞ何処行きゃるナーナーナー
おばゞ何処行きゃるナー
三升樽下げて ソンダマエー
ヒュルヒュラヒュー ヒュルヒュラヒュー
〓嫁の在所へ ナーナーナー
嫁の在所へナー
ソリャ孫抱きに ソンダマエー
ヒュルヒュラヒュー ヒュルヒュラヒュー
〓目出度 々々々が三つ重りて
〓鶴が御門に巣をかけた
〓岐阜はよいとこ 金華山の麓
〓小田の蛙が 寝て聞ける



59
C.武芸音頭 1'38" 藤芳住敏(36)
新作民謠につき省略

ニ.美濃市大矢田神社にて
この神社の起源は慶長・元和の頃という。祭礼は年々9月8日に行われて来た(慶長三年氏家志摩守寄進の記録あり)明治になって10月8日に変り、更に昭和3年以来は毎年10月18日に儀している
祭礼はダンヂリ車とヒンココに大別され
神輿が神前を出て行進してお旅所に至り、こゝでヤブサメ、組渡、ダンヂリ車上の稚児舞、獅子舞などの神事があり、やがて裏山の中腹からヒンコゝが始まる
ヒンコゝとは、下の人形の総称
○神人(風折烏帽子、白地紋付、茶筋袴、白の大幣)1人
○農夫(浅葱地、唐草、茶筋袴)11人
軍配持1人、鍬持2人、煙草持2人、俵負う種蒔1人、灰入苞持2人、土をかける人2人、頭に食物をのせた人1人
○猩々
○小蛇
○大蛇
大蛇が農夫達を呑みつくす所へ神人が来てこれを救うという単純なストーリーの所作がある。この所作の内、松明で照らし、ヒンコゝ囃子ではやす

a.ダンヂリ渡りの囃子
0" 笛 囃子 in
1'58" 〓万代の 万代の 目出度き御代の神まつり、民まつり
民も豊かに囃すなり、今日の祭り はやさん
3'25" 道行囃子 in
4'58" 頭へ戻る
6'51" FO
◎ダンヂリ渡りは上記の如く、謠囃子と道行囃子をくり返して進行する



60
楽器は、能管2、〆太鼓(下拍子という)2
この渡御を一名、笹渡りともいう

b.ダンジリの稚児舞、獅子舞
楽器編成、笛、大拍子、下拍子、大鼓、中鼓、後★アト★鼓(鼓三つは同じ楽器)
0" 稚児舞 in
3'58" 獅子舞になる(ヤーオン、ハーオン、ヤーオン、ハから)
(極めて三番■によく似た舞)
8'22" End

c.麦播き神事のヒンココ囃子 4'12"
楽器編成 笛2、大拍子1、鐃鉦2

d.おばゞ 1'47"
〓おばゞ何処行きゃる ナーナーナー
おばゞ何処行きゃる ナー
三升樽下げて ソンダマエー
アー浮いてきた 浮いてきた
〓嫁の在所へ孫抱きに
〓孫は大矢田の紅葉の里へ

e.十六拍子
二回演奏 1'43"

f.大矢田拍子 1'07"

g.雨乞踊 2'38"
〓大矢田よいとこ笹山越えて 笹の露やら袖絞る
〓揃た/\踊子が揃た 稲の穂のように出て揃た
〓大矢田よいとこ住みよい所 も山紅葉の燃ゆるとこ

◎d〜gは、大矢田部落の愛宕神社の組祭りの度に行われたもの、楽器は太拍子、笛、撓鐘
◎dはこれこそおばばの本家本元であるという
◎gは、雨乞いと共に盆踊りにも行われたもの



61
三.美濃市半道★ハミチ★にて
a.十三拍子の笛の演奏 1'11"
十三拍子という囃子があった由、土地の古老が笛の譜を思い出しつつ吹いてくれたが、不確実。他日やり直す予定

b.紙すき唄 41" 北村はる(51)市原はな枝(51)
〓半道よいとこ 紙どこ 田どこ
娘やりたや むこほしや
〓美濃の大矢田で乙女がすいた
紙で傘張る 加納の町

c.紙すき唄・川崎節 39" 同上二名
〓今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて
道の小草も米がなる
〓娘よければ上から下へ
若い衆が立つセコ先に

◎これが八幡のかわさきの元唄かもしれない。半道の小字に剣という土地があり、八幡から一里程の所には鶴見という土地あり、関係は?

d.唐臼ひき唄 32" 同上
〓今年ゃ豊年 穂に穂がさいて
道の小草も米がなる

e.臼ひき唄 30" 同上
〓わしとお前はいとこぢゃないか
袖をひかれて恥かしや

四.美濃市蕨生★ワラビ★にて
a.紙すき唄 59" 後藤つい(70)鈴木せつ(66)
〓わしが紙すきゃ 紙屋の向うへ
雪のふる夜に ちらちらと
〓紙が絞りたや蕨生(長瀬)の川で
流れ筏を見て絞る
〓紙がうちたや 生★キ★紙や反古★シデ★が
チョチョボ チョーやはうちぬくい



62
他に未収録の歌詞一つ
〓可愛いおっ嬶に紙すきさせて
そばで紙うちゃ悪うない

§110.愛知県知多郡東浦町緒川収録(37.11.16)
a.祇園ばやし 2回4'21"
毎年7月21日同所下切の津島天王祭に当り、多度より神を迎える。或いは雨乞いをかけた謝礼として囃したものが、80年前に廃絶し、その笛の譜のみ伝わっていたものを昭和36年に復活した。註.同郡阿久比町草木(旧6/22津島祭礼)などにもあり

b.屋台ばやし
慶応2年頃下切地区へ別所獅子を招いて練習した序でに習得したもの
道行3'18"、チャカボコ1'38"、カミナリ2'04"、大まわし2'56" etc.

c.機織唄 酒井けい(64)1'00"
〓機がおりたい とんから とんと
調子揃えて とんとんと トンカラン トンカラン
〓調子揃えて よう機おらぬ
さすを揃えて放かります トンカラン トンカラン
〓糸は緒ぢゃない 切れそなものよ
承知し乍ら 腹が立つ トンカラン トンカラン
〓糸は千筋切れても結ぶ
縁の切れたは 結ばれぬ トンカラン トンカラン

d.子守唄 同上 1'14"
〓ねんね ごろ市 竹屋の与一
丈をつろえて舟につむ
〓舟につんだら何処迄通う
尾張名古屋の橋の下
〓橋の下からおかめがのぞく
おかめおそがい 早うねんね
〓おらがこの子は誰より可愛い
可愛いなけらにゃ 守りゃ要らぬ



63
〓おらが(かわい)この子に でんちコきせて
うしろから見りゃ 猿のよな

e.唐臼ひき唄 水野とく(69)2'37"
〓臼の軽さよ 相手のよさや コラショイ
相手かわるなヨー 翌日★アス★の夜も ハーよう舞うねー
〓臼をひきやまた お手にもさわる
ひかにゃ お顔も 見えかねる
〓くるりくるりと廻るは淀の
淀の川瀬の水車
〓わしとお前はお倉の米よ
やがて世に出てまゝとなる
教育長 梶川武(東浦550)



§111.岐阜県恵那郡付知町収録(37.11.26〜28)
本田、阿部正、小沢薫弘
協力者 助役 牧野薫(TEL付知12)
郵便局長 田口守彦
公民館 小南九一郎
収録場所 付知町公民館にて
三輪神社にて

1.翁舞舞楽
付知町には下記の神社がある
金幣社 護山神社
五社 倉屋神社、大山神社、水撫神社、若宮八幡神社、児安神社
この五社は、年毎に巡祭を行うが、その祭にはこの翁舞と大和楽(新しいもの)を奉納する。確実な起源は判っていないが天和年間から行われたという。二人遣の人形(翁、千才、三番■)三体に小鼓、笛、謠で演じられる。謠の文章は通常の謠曲と同じ、また人形は天狗久の作ともいい、代々の庄屋を



64
つとめた田口家で保存されている。但し、度々の修理のとき、衣裳はとりかえられている。また小道具の面箱、黒白の尉面二面も現存
演出は、これも能に準ずる
a.翁・千才 11'20"
b.三番揉み出し 1'07"にてFO
以上演奏者
謠 三尾★ミオ★運平(58)、熊谷利貞(56)、熊谷朋助(63)、加藤得三
笛 早川定夫(32)、早川禎三(70)
小鼓 曽我茂雄(42)、三尾勝彦(36)、曽我三千正(37)

2.石搗き唄 2'14" 小池安一(58)牧野薫(51)口田福三郎(64)
〓今日は日がようて 石場がすわる
すわるヤレコリャ 石場にすわる石場に
福とまる ソリャヨイ ソリャヨイ
ヨイヨイなら お頼みぢゃぞ エンヤ
ヨイサ ヤーレ ソリャヨイ ソリャヨイ ソリャヨイ
〓お伊勢七たび 熊野へ三度
参りゃ添わして下さるか

3.仲乗りさん 3'00" 小池安一
〓木曽のナー ナカノリさん、木曽の御岳さんは ナンチャラホイ
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
〓袷やりたや足袋そえて
〓木曽の名木桧にさわら
〓ねずにあすひに高野槙
〓男伊達なら あの木曽川の
〓流れくる水 止めて見ろ



65
4.松坂 3'35" 藤原五郎(62)伊藤喜四郎(73)
清正が名古屋城建築の時、毛谷村六助が伊勢路に派遣され城の用石を運ばせたが、中でも最大の石は松坂迄くるとどうしても動かなくなってしまった。そこで六助は多勢のオイランを集めて来て、石にのせ、音頭をとらせた。これで石は一寸一寸動き出した。という伝説があり、この唄の起りとされているが、付知藩は名古屋の藩に属していた関係上、この唄が伝わり、転じて盆踊に唄われるようになった。
〓ヤレ松坂越えたヤレ 〆めこめノーヤレ
〓ハー目出度々々々の若松様よ コラショ
枝も栄える 葉もしゅげる アーヨイサノセー オージョジャ
葉もしゅげる ヤレ松坂コラセー越えたヤレ…
〓松になりたや峠の松に 上り下りの客をまつ
〓月がちょいと出て野山を抱きゃる おらも抱きたやお十七を(以上収録)
〓二百十日に風さえなけにゃ 稲に黄金の花盛り
〓踊れ若い衆三十までァ踊れ、三十神こしゃ子がおどる

5.甚句 1'06" 同上
〓揃た ヤーヨ コラショ コラ揃たよ 踊り子が揃た トコドッコイ ドッコイ
稲のヤーヨ コラショイ 出穂よりゃ オーサよく揃た トコドッコイ ドッコイ

〓鯉の滝のぼりゃ何というてのぼる 川を瀬にしよというてのぼる

6.仲のりさん 宮田守造(48)
〓木曽の御岳さんは夏でも寒い 〓袷やりたや足袋そえて
〓袷ばかりはやられもすまい 〓襦袢仕立て足袋そえて
〓竹の切節溜りし水は 〓澄まず濁らず出ず入らず

7.三輪神社獅子舞
同町下浦★シモウラ★にある同社の神楽は伊勢神楽の流れを汲むもので、此地に入ったのは約80年昔、静岡の■神楽から伝承したものという。毎年11月10日の例祭に奉納
a.道行 2回 1'20"
部落から神社へ至る行進

b.宮入り 2回 2'08"
川原についてから鳥居前迄の進行
以上a・bの演者は



66
笛 伊藤勝敏(25)、杉山辰三(43)
大胴★オードー★ 吉田博敏(39)
〆太鼓 吉田初夫(32)、中田 好★コノム★(23)、三尾喜次郎(22)、熊谷政光(25)、吉田正美(23)
大太鼓 宮田守造(48)

c.囃子・開★カイ★の舞 5'30"
笛 伊藤勝敏、杉山辰三
太鼓 宮田守造

d.幣の舞 8'34"
唄・太鼓 宮田武夫(40)、宮田守造
笛 伊藤勝敏、杉山辰三
舞 吉田初夫

〓身は三尺のエージャク エーオノ ソーモンおいてヤー 悪疫を払うよエー
お目出度い エー 太平楽よと あらためるエー ○合
〓ヤー ソコジャテナーエ エー○合
〓ヤーレナーコーレガナー、ヤーコレワイナー お宮の悪魔を払う
ヤーレナー エー鶴が御門に何というて巣かけた お家御繁昌というてかけたエー○合
〓マー ソコヂャテナーエ エー○合
〓ヤーレナー めでたヤー コレワイナーめでたが度重りて ヤーハレナー
エーめでた大黒さんと 氏神は 次第々々にゃ未繁昌エー○合
〓ヤーソコジャテナーエ、エー○合
〓マー オイタカナーエ、エー○合
〓ヤー小上げかおめでたいエー○合
〓ヤーレナー、これがヤーコレワイナー納めか サ、マ、おめでたいヤーハレナー○合



67
No.5
お鍬様信仰を濃北一覧(幕末に小川氏著述)によって次に紹介いたします。伊勢神宮外宮より六〇年目に御師によって各村之農作と養蚕のお祝いにやって来る春まつりでした。享和二年二月二日、美並村一同にて御上様にお願いしてお鍬様を招く、二十五日には八幡町之招き作り物をして祝う。翌小野村え渡す。
文政十一年二月二十日八幡町え招き、作り物をいたし翌小野村え渡す。一つは五町より上保筋を廻り、二月二十日頃までに■上残らず相済。東て原村にて減、のようすで郡上を一円廻ったわけであるが、経費の都合で休む村もあったようです。このお鍬様祭りには地元の村の最高の祭りで各地各様の催し物があった。このお鍬まつりにあやかって、当村より宮島町にくるまでは子供十五人が鍬形をとって皆のはやしによって舞っています。
サー若い衆ヨ モーひと切っぱし 頼むぞよ(笛、大鼓)
オークワサマヨ ホーネンジャ〈 サァー(笛、大鼓のハヤシ)
この影響をうけてか各地のカキ踊りには大形の木鍬が用意され、数人の人達によって舞われる。外宮は60年目とされているが、内宮は招けば何時でも来たと言う。郡上藩としても奉行12人を任命してこれを庇護した。
以上寺内啓蔵氏報告


e.余興の嫁獅子
楽屋 宮田武夫、宮田守造
@傾城阿波鳴門 3'15"
A忠七 4'44" 同上二名と 平右ヱ門、伊藤勝利
余に忠三、忠五、鈴鹿合戦、矢口渡、丗三間堂、鈴木主水、安達三etc.があり。

8.お鍬様囃子 3'28"
お鍬様とは田畑を司る神、従って豊作を祈る目的で美濃の山村にはお鍬様信仰があり、その祭礼の日に、畦から畦へはやして歩く囃子
今から348年前に始まる

9.わらべ唄 付知町北小学校5・6年女生徒14名
a.おかめ 16"
〓おかめが凧あげて 電信柱に引掛って、父さん母さんとっとくれ
梯子がなければとれんぞよ

b.郵便屋さん 22"
〓郵便屋さんがハガキを十枚落しました。拾ってあけましょ一枚二枚………十枚これでおしまい左様なら

c.俵のねずみ 17"
〓俵のねずみが一匹チョン……三匹チョン
お廻り廻って一匹お逃げ……三匹お逃げ

d.文福茶釜 9"
〓文福茶釜のお祝いに お湯がわいたらお出なさい

e.熊さん 19"
〓熊さん熊さん 廻れ右
熊さん熊さん 両手を上げて
熊さん熊さん 左足上げて
熊さん熊さん 両手をついて
熊さん熊さん お出なさい

f.お嬢さん 12"
〓お嬢さんお入り 今日は ジャン拳ポン 負けたお方は お出なさい



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g.青山御所 20"
〓青山御所から白い鳥が三つみつ、赤い鳥が三つみつ
そのあと袴はいて オッポコポイノポイ

h.一かけ 48"
〓一かけ二かけ三をかけ 四かけ五かけで橋をかけ
橋のランカン腰をかけ 遙か向うを眺めれば
十七八の姉さんが 花と線香手にもって
姉さん/\どこ行くの 私は九州鹿児島の
西郷隆盛娘です 明治10年3月3日
切腹なされた父上の お墓参りにまいります
お墓の前で手を合わせ ナムアミダブツ ジャン拳ポン

i.坊さん 21"
〓坊さん/\何処行くね 私は田甫へ稲刈に
私も一緒につれてって お前がくると邪魔になる
カン/\坊主糞坊主

j.一で橋 57"
〓一で橋 二で杜若 三で下り藤 四で獅子牡丹
五つ い山の千本桜 六つ紫桔梗の花ね
七つなりてん 八つ八重桜 九つ小梅を散らしに染めて
十で殿様 葵の御紋

k.西条山 31"
〓西条山は霧深し 筑摩の川は波荒し 遙かにきこえる物音は
逆巻く波か強者か 上る旭の旗のてに、ひらめく縞にくる/\
車廻りの銀止り

c.一番始め 42"
〓一番始めは一の宮 二は日光東照宮
三は佐倉の宗五郎 四には信濃の善光寺
五つ出雲の大社 六つ村々天神さん
七つ成田の不動さん 八つ八幡の八幡宮
九つ高野の弘法さん 十で東京、招魂社


69
m.吸もの 41"
〓夕べ に呼ばれていたら 鯛の吸物鯨のまきもの
お金の茶碗に一杯吸いましょ チュチユ
      二   〃    〃  (以下省略)
      十杯吸いましょ チュチュ

n.大黒様 43"
〓大黒様という人は
一で俵をふみ廻し 二でにっこり笑うて
三で杯 手にうけて 四つ世の中よいように
五つ何時もの如くに 六つむしょうでしよくさんに
七つなゝこと無いように 八つ屋敷を広めても
九つこゝらで家立って 十でとんと納った 納った

o.夕べ貰うた 40"
〓夕べ貰うた花嫁が 何が悲しょて泣くのやら
行った日にちがたての上、裃縫えと当てられて
裁ったり縫ったりしたけれど、紐のつけどこ忘れたで
教えておくれよ叔母御様 教えてやることぁやるけれど
人の嫁御となるものが それを忘れてなるものか なるものか

p.お芋屋さん 44"
〓ヒイ、フウ……トオ
唐からおいでたお芋屋さん お芋は一升いくらじゃえ
三銭三厘三毛ぢゃ そりゃ高い
もうちとまからか チャカラカポン
お前のことならまけてやろ 包庁切盤出しかけて
お尻を切るのは胴慾な お腹を切るのは胴慾な
おナラはごめんでプップップー

q.うらがおせど 1'12"
〓うらがおせどのジシャの木に 雀が三羽とまって
一羽の雀が言う事にゃ 稲はすがれぬ鎌はなし
関のカジ屋へ鎌打ちに 一年まっても帰りゃせぬ



70
二年まっても帰りゃせぬ 三年目月に状がきた
誰にこいとて状がきた おきたにこいとて状がきた
おきたは死んだ今日七日 七日の墓へ参るとて
コンニャク手ぶらに手をついて あ痛た、こ痛た 伯母御様
何か薬はあるまいか 夏降る雪を手にためて
油でねって湯でといて それをつけたらよう治ろ よう治ろ

r.とんとん 31"
〓とんとん叩くは誰様ぢゃ 新町横丁の次郎兵ヱ様
今頃何しにおいでたや 雪駄がちごうて来たわいな
貴方の雪駄も京雪駄 私の雪駄も京雪駄
どちらも似たよな京雪駄 々々々

s.さん坂本 1'09"
〓さん坂本の坂本の 九兵ヱ門という人は
女子の子ばかり三人で 一人の娘を嫁にくれ
二人の娘も嫁にくれ 三人目の乙娘
名古屋の町へ貰われて サッサこれから仕立物
夏着る着物も四十二枚 冬着る着物も四十二枚
前掛なんぞも七八筋 銀のキセルも四十一本
これ程仕立ててやるものを 出てくるなよ乙娘
退られてくるなよ 乙娘 出てくるとも思やせぬ
退られてくるとも思やせぬ 思やせぬ

t.仙波山 25"
〓あんた方どこさ 肥後さ
肥後どこさ 熊本さ
熊本どこさ 仙波さ
仙波山には狸がおってさ
それを猟師が鉄砲で打ってさ
焼いてさ 煮てさ 喰ってさ
アーラ うまかったとさ
お茶の子 さいさい



71
u.坊ちゃん 20"
〓坊ちゃん坊ちゃん どこいくね 私や田甫へ稲刈に
私も一緒につれしゃんせ お前のあいこと邪魔になる
赤い褌で どこいくね

◎護山★モリヤマ★神社(祭4/25)
○付知は裏木曽の名高い桧山があり、この護山神社は木曽各十一ヶ町村の総鎮山である。
○足利義政の頃、銀閣建築材はこゝから出したという
○元和年間に徳川領となり、尾張の所管となる
天保九年江戸城西丸焼失、その再建材を付知から用達すべく河内三左ヱ門が此地に来る。数抱えもある桧の大材は斧を打込むと出血し、翌日になると切口が跡かたもなくなっている伐採夫は狂死、一天暗夜の如くなる(日蝕?)それでも長さ七間末口五尺の材、数千本を伐採したが、現付知町に積みおいた夜出火するというさわぎ
一方、柳営でも十二代将軍家康夫人が夜毎天狗におびやかされた。切出し場の三尺以上の大木には〆縄をはり、同十一年名古屋の片山八幡宮に疑して神社を作る。この霊域には東股谷三神祠★サンジンボラ★(山神祠)から三つの霊石を持来って祀り、山神(山・木・草)を鎮めた(これが奥宮)
三石は中央大山命、両脇鹿島香取神
この宮は加子母村の熊沢権正が守っていたが、天保十四年、土地の不便の故付知に本社を金二万両で建立

◎未収録の歌詞
〓朝も早よから倉屋の歌は しょうけかゝえて米かりに(■謠)
〓付知通らば急いで通れ 付知ゃくじどこ くじかける (〃)
〓弁慶が/\ ヨンヨイ 五条の橋のまん中で ヨンヨイ
柄も四尺刃も四尺 ヨンヨイ 合わせて八尺の長刀で ヨンヨイ
牛若やらんと切りかけた エーンヤラ ヨイサーヤレ ヨンヨイ
ならおたのみぢゃ ソリャーヨイ (地搗唄)

◎他に地芝居も盛ん